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音楽の海岸

又吉直樹『火花』

新作が出たからなのか、近くの図書館で予約しなくても借りれるようになったので、又吉直樹の『火花』を読んでみた。たまには話題の書でも読まなければネ・・・と思ってのことだけど、考えてみれば話題になってから2年以上も経っているので、いずれにしても世間からは完全にズレてしまっている。

評価するのは難しい。しかし、思っていたよりはずっと良かった。無理をせず、自分のフィールド(=芸能の世界)を舞台にしたことが成功の一因ではないか。特にラスト近くにある漫才のシーンは秀逸で、最初にこのシーンを思いついて、そこから逆算して作品を書いていったのではないかと思うくらい飛び抜けて良く書けている。一方で、その後のエピローグ部分ではとんでもない飛び道具が出てくるので座りが悪いというか、読後には奇妙な余韻を残す。

総体的にみれば、美点も欠点も同じくらいあるので、読者が良いところ(だけ)を見るか、悪いところ(だけ)を見るかによって評価は大きく変わってくると思う。「惜しい!」というのが個人的な感想。芥川賞を同時受賞した羽田圭介の『スクラップ・アンド・ビルド』よりは楽しく読ませていただきました。

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by ok-computer | 2017-06-26 10:48 | | Trackback | Comments(0)