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ガス・ヴァン・サント『エレファント』

『エレファント』再鑑賞。▼1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件を題材にしているが、事件の分析や謎解きといったものを期待するとまったく当てが外れてしまう。▼事件当日の加害者と被害者の一日をスケッチするといった趣きで、むしろテーマの掘り下げは浅いと言ってもいいくらいかもしれない。▼この映画の魅力は物語のなかにあるのではなく、物語を伝達する手段としての映像、またその切り口にあるのだと思う。▼すべてのシーンがアート写真のようにスタイリッシュなのだが、決して静的な映像ではなく、校舎内というロケーションを生かした移動カメラによる長回しが多用されている。▼これが実に効果的で、これほど美しい移動撮影はキューブリックの『シャイニング』以来ではないかと思わせる。▼ほかにも、広角カメラ、背景のぼかし、ハイスピード撮影、微妙なスローモーションなど、様々なテクニックが用いられており、映像的な見所は非常に多い。▼誰もが知っている事件ということは、観客は最初から物語がどう展開するのか分かっているわけだが、その悲劇的なエンディングに至るまでを切ないくらいに美しい映像で描くことによって逆に事件の残酷さがより際立ってくるのだ。▼ベートーヴェンの『月光』や『エリーゼのために』と、Hildegard Westerkampなどのサウンドアーティストによる音のコラージュとを組み合わせたサウンドトラックの設計も特筆される、ガス・ヴァン・サントのなかではいまだに一番好きな作品。
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by ok-computer | 2011-12-26 21:04 | 映画 | Trackback | Comments(0)
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