bend sinister

2012/8/12

▼ティム・ハーディンの『Tim Hardin 1』を聴く。▼ティム・バックリイやニック・ドレイク、そしてグラム・パーソンズと並ぶ、60年代後半にデビューした、儚くも心を打つ美しい作品を残す一方で、(薬がらみの)不幸な人生を送ったアーティストのひとり。▼特にこの人は奥さんのスーザン・ムーアさんとの関係で印象が強い。▼なぜ有名人でもない奥さんのフルネームを知っているかというと、『Tim Hardin 2』に収められた「The Lady Came from Baltimore」という曲で実名が出てくるうえに、『Suite for Susan Moore and Damion』という家族をテーマにしたアルバムまでリリースしているから。▼しかしながら、その家族をテーマにしたアルバムを出した後に奥さんは彼の元を去ってしまう。▼後のアルバムのなかでハーディンは彼女が他に男を作ったというようなことを歌っているが、実際にはヘロイン中毒の彼と一緒にいることができなくなったためとも言われている。▼真相はよく分からないが、はっきりしているのはこの出来事の後、アーティストとしても一個人としてもティム・ハーディンの転落が始まっていったということだ。▼もちろんこういった話は彼の音楽の価値を左右するものではないが、彼自身どちらかというと公私混同タイプのアーティストだっただけに少しは意識せざるをえないのかもしれない。▼『Tim Hardin 1』で聴くことのできるハーディンの音楽はフォークとブルースに根ざしながら、そこにジャズ・フィーリングも幾分加味した、おそらく当時としては珍しくて画期的なもの。▼「Reason to Believe」はロッド・スチュアートを始めとして多くのミュージシャンが取り上げたこともあってアルバムのなかでは有名な一曲だろう。▼カバーされると大抵この曲の情緒的な側面が強調されるが、ここではシンプルかつ苦みを効かせて、やはり作者本人のヴァージョンが一番良いと思わせられる。▼他にも「Don't Make Promises」「How Long」「Misty Roses」「How Can We Hang On to a Dream?」といった名曲が目白押しで、久しぶりに聴いてみて改めてその素晴らしさに驚かされた。▼ハーディンは1980年12月29日、ジョン・レノンの死のちょうど3週間後にヘロインの過剰摂取によって39歳で亡くなるが、彼の完成させた最後のアルバム『Nine』は、その7年も前にリリースされたものだった。

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by ok-computer | 2012-08-12 18:08 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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