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小川洋子『最果てアーケード』

▼小川洋子の『最果てアーケード』を読了。▼コミックの原作ということで一抹の不安を感じたが、蓋を開けてみればいつもの小川ワールドでひとまずは安心する。▼構成的には『人質の朗読会』に引き続き、連作短篇集の体裁をとっているが、一編ごとの独立性が高い『人質の朗読会』と較べると、『最果てアーケード』は収められたそれぞれの短篇が全体を構成するピースのひとつであるという性格がより強くなっていると思う。▼特に「勲章店の未亡人」以降は、それまでのアーケードの店主とお客さんとの物語から、語り手であるアーケード管理人の娘の物語へと徐々にシフトしていく。▼ある程度の小川作品に触れたことがある人なら途中から展開が読める、というかそのように書かれてあるのだが、おそらくほとんどの読者の予想通りに進んでいってしまうところが逆に哀しい。▼ある意味では残酷と言ってもいいかもしれないような切ない物語が、美しい文体によって綴られていくことでより一層際立つことになる。▼生と死の共存、静かな締念のようなものは、これまでの小川作品のなかでもみられたテーマだが、だからといってありふれたものに陥ることなく、さざ波のように静かに読者の心を打つ。

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by ok-computer | 2012-08-13 22:18 | | Trackback | Comments(0)
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