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レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』

▼レイモンド・チャンドラーの『ロング・グッドバイ』を読了。▼村上春樹による新訳版。▼『リトル・シスター』のときにも書いたが、村上春樹の文体はチャンドラーのそれに似ていると思う。▼ときとして回りくどいくらいの比喩表現や、本筋と関係ないところの綿密な描写など、村上春樹が訳しているから彼の作品に似たテイストになるという以上の近似性を感じさせる。▼そしてこの新訳の最大の功績は、これまでの清水俊二版『長いお別れ』ではカットされていた部分をすべて復元したという点にあるだろう。▼チャンドラーの作品はストーリーそのものと同じくらいに細部の表現が重要なのでその意味でもありがたい。▼内容的にはいまさら云々する必要のない見事なものだが、以前(清水訳で)読んだときに感じていたよりもずっと、重要なキャラクターであるテリー・レノックスの登場する場面が少なかったのが意外だった。▼しかしながら、テリーの不在は、その存在と同じくらいの重みを持って、周りの人間の行動に少なからぬ影響を最後まで与え続ける。▼それはまるで物語の通奏低音のように。
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by ok-computer | 2012-10-08 12:12 | | Trackback | Comments(0)
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