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音楽の海岸

デヴィッド・ボウイ『Heroes』

 デヴィッド・ボウイの『Heroes』を聴く。

 ボウイが自身の最高傑作としてしばしば挙げるアルバムであり、パンクの嵐が吹き荒れていた1977年にNMEのライターがその年のベストアルバムに選出した作品であり、最新作『The Next Day』においてジャケットがリサイクルされた作品でもある。

 私はといえば、ひとつ前の『Low』を良くも悪くも分かりやすくした作品というのが、ずっとこのアルバムに抱いていたイメージで、聴き返すのはおそらく数年ぶりのことになるだろう。

 CDに詰め込まれた音楽そのものは変わらないというのに、聴き手である私の方が(おそらく)変わったことで、以前とは違う物の見方や感じ方も出来るようになったし、オーディオ・システムを変更したこともいくらかは影響しているに違いない。

 時の経過とともに色褪せてしまう作品というのもあるが、このアルバムの場合にはそれは当て嵌まらなかったようで、むしろ時間をかけてようやくその真価を聴き取ることが出来るようになったのかもしれない。

 残念ながら、私は70年代のボウイをリアル・タイムで体験することは出来なかったが、その代わり追体験という形で彼の作品に触れて、『Hunky Dory』から『Heroes』にかけての、ひとりのアーティストがこれだけの変貌を遂げながら、なおかつクオリティの非常に高い音楽を生み出し続けた奇跡のような在り方に驚嘆させられてきた。

 CDやアナログ盤などの録音で体験することは、あるいは遠い谺を聴くような行為なのかもしれないが、それでいて繰り返し見ることのできる夢のようなものでもあると思う。


by ok-computer | 2013-07-19 22:12 | 音楽 | Trackback | Comments(0)