bend sinister

バルトーク『管弦楽のための協奏曲』

▼バルトークの『管弦楽のための協奏曲』を聴く。▼ぼくは決してバルトークの良い聴き手とは言えないが、この曲は昔からとても好きで、彼の作品で何か聴きたいなという時には真っ先に手が伸びてしまう(今回も)。▼この曲の良いところは何と言っても分かりやすいところ、と言っては身も蓋もないかもしれないが、バルトークらしいクールな質感を維持したままに分かりやすい曲に仕上がっているところが、ぼくのような怠惰なリスナーには喜ばしい。▼まあ、もっともらしいことを言わせてもらうと、芸術家が自分らしさを失わずに、魂を売り飛ばすこともなしに、大衆にアピールする作品を生み出すことの見本のような曲であると思う。▼今回聴いたのはイヴァン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団による演奏(例によって安かったから入手していたCD)。▼まずは第1楽章で大きく提示され、第3楽章でも再現される主題のくるおしい旋律が耳を捉える。▼第2楽章のユーモラスな趣き、第5楽章のくるくる旋回するようなヴァイオリンのフレーズもとっても面白い。▼第4楽章は夢見るような雰囲気が支配的だが、中間部ではショスタコーヴィチの交響曲第7番・第1楽章のフレーズが(ちょっと馬鹿にしたような感じで)引用される。▼バルトークはショスタコのこの作品の初演をラジオで聴いて、その書法がまったくバカバカしいものだと感じたらしく、自作で嘲笑的な批評を試みたようだ。▼ぼくがこのエピソードで驚いてしまうのは、第二次世界大戦下のソ連で行われたショスタコの演奏会の模様を、アメリカに住んでいたバルトークがラジオ放送で聴いていたという事実。▼同時代を生きていたのだから当たり前じゃないかと言われればそれまでだが、それにしてもすごい偶然、すごい時代だったのだなと感嘆する。

f0190773_13122638.jpg
[PR]
by ok-computer | 2013-08-14 22:31 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://bends.exblog.jp/tb/20205906
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]