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音楽の海岸

ミヒャエル・ハネケ『愛、アムール』

▼ミヒャエル・ハネケの『愛、アムール』を鑑賞。▼127分の映画で総カット数は236しかないとのことで、だいたい1000カット前後と言われる(『ボーン・アルティメイタム』は4000カット以上!)通常の映画の基準に較べるとかなり少なめで、長廻しが多用されていることが数字的にも実証されている。▼じっさい、作品を観ていても「どこで切り替わるのだろう?」と思ってしまうような、あまりに長過ぎるように感じられるショットが多いのだが、それがなんでもないシーンでも何かが待ち受けているのではないか?という緊張感を観る者に強いる効果を生み出してもいる。▼その一方で、とくに会話シーンなどでは次に重要な答えが出されるという前でバッサリと切られたりもして、映画の約束事みたいなものをことごとく外していく、つまりはいつものハネケ作品となっている。▼ネットでこの作品を検索すると「ハネケの映画を観て初めて感動した!」的な感想が出てくるのだが、ぼくにはまったくそうは感じられなかった。▼映画としてはリアル過ぎる老人介護の描写を延々と映し出していくさまは、ハネケの(悪名高い)『ファニーゲーム』で監禁されてひたすら嬲られていく一家の姿にそのまま重なっていく。▼結局のところハネケは不変なのだが、カンヌでパルムドールを獲って周囲の目が変わったのか、「感動したい症候群」の一部映画ファンに消費されつつあるのか。▼ぼくはといえば、映画後半の幻想・妄想的なシーンの挿入や、鳩の象徴的かつ曖昧な使い方に作為的なものが感じられたのが残念だったのだが、ハネケは『ベニーズ・ビデオ』や『セブンス・コンチネント』のような初期作品が好き、というようなぼくみたいな人間はもはや稀になっているのかもしれない。

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by ok-computer | 2014-04-13 13:49 | 映画 | Trackback | Comments(0)