bend sinister

角田光代『紙の月』

▼角田光代の『紙の月』を読了。▼『八日目の蝉』を読んで、好みのタイプの作家さんではないなと思いながらも、何かしら引っ掛かるものを感じたので、この作品も手に取ってみた。▼結果、やはり『八日目の蝉』と同じような読後感を抱くことになった。▼出てくる人物誰もが愚か過ぎて共感を抱きにくい、男性キャラクターの描き方がどこか平板で主人公がのめり込む(あるいは嫌悪する)理由がいまひとつ伝わってこない、というのが両作品に共通する弱点だとぼくには感じられた。▼肝心なところで主人公が思考を放棄してしまうのは、彼女の心の弱さを表現しているとも言えるが、なぜ彼女があのような行動をするに至ったのかを過去に遡ってまで説明しようとしている作品のなかでは、いかにも説得力不足に映ってしまうのも仕方ないことかもしれない。▼それでも最後まで読み通すことができたのは、複数の語り手を通してのストーリーテリングの上手さ・面白さ、主人公の現実逃避願望がそのまま物理的な逃避行動に直結していく部分辺り所以ではないかと思う。▼どこまで逃げても逃げ切ることなどできやしない、現実や社会は姿形を変えてでも、またわたしの前に立ち塞がるのだからと、どこかで分かってはいても逃げるしかない主人公の姿に、詰まらないと言って切り捨ててしまうことのできない、ここに在ることの哀しみのようなものを感じる。

f0190773_2124111.jpg
[PR]
by ok-computer | 2014-09-28 21:02 | | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://bends.exblog.jp/tb/23025694
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]