bend sinister

シェーンベルク『ピアノ協奏曲』

▼ある日本人作曲家が雑誌の対談のなかで「シェーンベルクが音楽を駄目にした」というような内容のことを喋っているのを目にして、ぼくは思った。▼譜面を読むことが出来ても、楽器を弾くことが出来ても、必ずしもすべての音楽を理解できるというわけではないのだと。▼ぼくはそれまでも人生の多くの時間を音楽を聴くことに捧げてきた。▼そしてそれ以降、さらに音楽を無心に聴くことに邁進するようになった。▼譜面も読めず楽器も弾けないぼくみたいな人間が音楽を(少しでも)理解するようになるには音楽を、ただ音楽そのものを聴くことが必要なのだと理解したのだ。▼音楽理論など一切分からずとも、シェーンベルクのピアノ協奏曲を耳を澄まして聴いてみれば、その作品のユニークな美しさを感じ取ることはそれほど難しいことではない。▼シェーンベルクは自ら編み出した十二音技法によってドイツ音楽の支配力はこれから数百年間確保されるだろうと信じていた。▼ある特定の芸術ジャンル(=クラシック音楽)の衰退をたった一人の人物に転嫁するなど馬鹿馬鹿しい話だが、もしも責任が何処かにあるとすれば、それはシェーンベルクではなく、彼の発明を発展させることも、新たなる発明を発見することもできなかった後進の(先の発言をした人物も含む)作曲家たちなのではないだろうか。▼シェーンベルクはぼくに音楽の魅力はその旋律(だけ)にあるのではないことを教えてくれた。▼主旋律だけを追いかけるのではなく、音の響きそのものに耳を傾けること、音楽を全体として捉えること。▼それは音楽を損なうどころか、音楽の本当の美しさにぼくを導いてくれたのだった。

f0190773_00176.jpg
[PR]
by ok-computer | 2014-10-15 00:01 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://bends.exblog.jp/tb/23119819
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]