人気ブログランキング | 話題のタグを見る

音楽の海岸

ジョン・コルトレーン『Both Directions at Once: The Lost Album』

ジョン・コルトレーンの完全未発表スタジオ録音作『Both Directions at Once: The Lost Album』を聴く。

『A Love Supreme』『Crescent』『Live at Birdland』といった、コルトレーンの傑作群を差し置いても聴くべきアルバムだとまでは言えないけれど、コルトレーンを聴いたことが無い人が、ただ単に話題になっているからと言って買ったとしてもコルトレーンの魅力は充分に伝わってくる素晴らしい内容だと思う。

録音は1963年3月6日で、コルトレーンの空間を埋め尽くすような、所謂「シーツ・オブ・サウンド」のスタイルはすでに確立されている一方で、後年の一部の人には近寄り難いと思わせるようなフリージャズ寄りの世界にはまだ至らない、一般的なジャズ・ファンにとって最もイメージしやすく、またアクセスもしやすいであろう時期の極め付きのコルトレーン・サウンドを堪能することができる。

「Untitled Original 11383」と「Untitled Original 11386」という、完全未発表のオリジナル作品は、その後再度取り上げられることが無かったことが不思議なくらいどちらもクオリティの高い楽曲(と演奏)であり、さらに「Impressions」と「One Up, One Down」のスタジオ録音版がここで聴けることもコルトレーン・ファンにとっては堪らない魅力だろう。とくに後者は、スタジオテイクならではの破綻の無さと、ライブ録音にも負けないような熱気とが両立された最高の演奏ではないだろうか。

アルバム・ジャケットの内側に印刷された「これは、まるで巨大ピラミッドの中に新たな隠し部屋を発見したようなものだ」というソニー・ロリンズのコメントには納得するしかない、ジョン・コルトレーンという巨大な才能を持ったミュージシャンの伝説をより強固なものにし、新たな一ページを加えることとなる、コルトレーンやジャズ好きを自認する者にとっては必聴の一枚。



by ok-computer | 2018-08-07 22:18 | 音楽 | Trackback | Comments(0)