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音楽の海岸

大阪芸術大学「卒業制作展2019」(大阪芸術大学50)

 昨年から卒展とオープンキャンパスの同時開催形式になっていますが、今年はオーキャン部分はやや縮小されて、卒展作品をじっくりと見れるようになったのは良かったと思います。

 透明回線や小松原智史さんの作品を初めて見たのも大芸大の卒展でしたし、本当に様々な作品が並んでいる中から、「これだ!」と思わせてくれるような才能に出会える期待を胸に、ここ10年ほど毎年楽しみに拝見させていただいています。

 あくまでも個人的には、ですが、今年の卒展で印象的だった作品を以下に紹介していきます。

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 川上大志さんの『22歳児』。少年ヒーローをモチーフに、また、卒展ということで「旅立ち」をテーマにしたという油画。面で描いた立体的な趣に加え、下塗りが見える部分では切り絵的なテイストも感じられます。ヒーローたちが、街(社会)に心ならずも吸い込まれていくように見えるのは、卒業にあたっての作者のアンビバレンツな思いが伝わってくるよう。卒業後は何と警察官になるそうですが、ぜひ絵も続けてほしいです。

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 笹尾彰樹さんの『Crafts man』。ホットワーク技法による、ガラスの上部に顔が接着された作品。デスマスクをガラス工芸的に解釈したように思えなくもないような。重たそうな、土台のセメント部分も含めて、およそ実用性の感じられない唯美主義的な潔さも好ましい。

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 瀨﨑彩乃さんの『それでも私は』。美術学科学長賞受賞。社会の荒波にのまれて絵を描いてきた自分が埋没するのではないかという危機感と、それでも絵を描きたいという抗いの気持ちが込められています。満員電車から着想を得たそうですが、クローゼットを描くことを通して、それを間接的に表現しながらも、その不安感みたいなものを顕在化させることに成功しているのが素晴らしいと思います。クローゼットにある服はほとんどがご自身のものですが、友人の服もいくつか混じっているそうです。服の袖から絵具が滴っているのにはどんな意味性があるのですか?と聞いたところ、このドリッピングには賛否両論あるが、見る人に絵画であることを意識してもらいたかったのと、色んな風に解釈してもらいたくて敢えてそうしたとのことでした。傍にいらっしゃったので、お話しすることができたのですが、ご本人もとても感じの良い方でした。

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 南美咲さん『ルージュの伝言』。右目はすべて隠されていますが、何か意味があるのかもしれません。

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 上田理世さん『suzuro』。デザイン学科イラストレーションコースの方。カメをモチーフにした連作の一部。共通するカメ愛を確認できたような気がしました(笑)


 あと、写真が撮れなかった作品の中では、一人暮らしの女性をテーマにした、写真学科の濱緋里さんの「Please Love Only half」が、写真集のページに丸い穴を開けた仕掛けが面白く、その装幀も含めて良かったと思いました。

by ok-computer | 2019-02-11 20:26 | アート | Trackback | Comments(0)