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音楽の海岸

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2011/10/30

▼グバイドゥーリナの新作『Fachwerk』を聴く。▼バヤンと打楽器と弦楽オーケストラのための作品、とある。▼シュニトケの『合奏協奏曲第一番』、カンチェリの『風は泣いている』、ペルトの『タブラ・ラサ』のように、一般的なクラシック・ファンにも通用するような作品がないせいで地味な印象もあるグバイドゥーリナだが、ぼくとしてはペルトよりも高く評価したいし、カンチェリよりも作品の出来不出来が少ないような気がする。▼グバイドゥーリナの作風の特徴のひとつには、この協奏曲にも使われているバヤンという楽器がフィーチャーされる作品が多いことで、このロシア式アコーディオンの響きは彼女の音楽に良い意味でのローカル色と、郷愁にも似た情感をもたらしているように思う。▼この作品でも全体を覆う厳しい雰囲気と対峙するようなバヤン独特の音色を聴くことができるが、個人的にはそれに加えて、21分を過ぎた辺りから始まる弦楽パートの渦を巻くような展開がなかなか格好良くて感じ入ってしまった。

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by ok-computer | 2011-10-30 11:08 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2011/10/26

▼マーラーの交響曲第10番を聴く。▼ デリック・クックによる補筆完成版。▼マーラーのこの交響曲を聴くことは墓を掘り起こすような行為だと感じていたこともあったが、あるときに第五楽章の美しさに気づかされて、それ以来、マーラーのもっとも好きな作品のひとつになっている。▼クック版とはいえ、聴けば聴くほど、これは紛れもないマーラー、とくに旋律に関してはマーラーしかありえないものだと思うようになってきた。▼それほど多くこの作品の録音を持っているわけではないが、ジェームズ・レヴァイン指揮のものが気に入っている。▼この曲の第四楽章には冒頭をはじめ、何箇所かにマーラーらしからぬ打楽器が加えられている。▼ラトルやハーディングはそれを不自然なものとしてカットしているが、レヴァインはクックの指示通りの演奏をしながらも、弦楽器を分厚く被せて、それを目立たないよう巧みに処理している。▼9番でもそうだったが、レヴァインの演奏は悠然として恰幅があって包容力がある。▼何もかもを包みこむような演奏は、生と死、愛と憎しみ、その他あらゆる感情が内包されたマーラーの音楽を表現するのに相応しい。

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by ok-computer | 2011-10-26 21:26 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2011/10/23

▼ マイルス・デイビスの『ビッチェズ・ブリュー』を聴く。▼『カインド・オブ・ブルー』に次いで、マイルスのアルバムの中でよく売れている作品だとのことだが、このアルバムの評判を知って購入したものの、じっさい聴いてみてもよく分からず、他のマイルスのアルバムに触れることなく終わったような音楽ファンも多いのではないだろうか。▼ぼくの場合、『イン・ア・サイレント・ウェイ』や『キリマンジャロの娘』(どちらも僕の大好きなマイルスのアルバム)を聴いた後に『ビッチェズ・ブリュー』を体験したので、びっくりするようなことはなかったが、先述の2枚のアルバムのように一発で気に入るようなことはなく、なんだか小難しい音楽だな、と感じていた。▼もしかしたら『ビッチェズ・ブリュー』を特別なものにしている要因のひとつには、その「わけのわからなさ」にあるのではないか。▼なんだかよく分からないけれどやたらテンションの高い音楽がCD2枚に渡って繰り広げられるのを聴いて圧倒されるか、もう2度と聴くもんか!と思うのか。▼しかし、今回改めて聴き直してみて、意外とジャズの基本的フォーマット、テーマ→アドリブ→テーマという展開に準じていることに気付かされた。▼ただ、テーマがそれほど分かりやすいものではなく、アドリブの部分が長く強烈なので、どちらがメインなのか分からなくなって混沌とした世界を形成しているのだ。▼おそらく一聴したただけでは分からないので、逆にそれが分かった瞬間の喜びが大きい、という結果を聴く者にもたらして、他のアルバム以上の評価を得ているのかもしれない。▼ぼく個人としては、先駆性とクールな質感の両方において、『イン・ア・サイレント・ウェイ』をより上位に置きたいところだが、この『ビッチェズ・ブリュー』も、その猥雑ともいえるようなテンションの高さと、秘術めいた妖しい雰囲気という点では他に得難く、やはり捨て難い。

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by ok-computer | 2011-10-23 21:14 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2011/10/22

▼ 有田正広独奏によるモーツァルト『フルート四重奏曲』を聴く。▼ぼくにとってブラームスとモーツァルトは好きなのか嫌いなのか判然としないふたりだ。▼より正確に言えば、好きになったり嫌いになったりする作曲家だということになる。▼目下のところ、ブラームスは好きの周期に来ているが、モーツァルトは嫌いな時期にさしかかっている状況かもしれない。▼それでいながらこのCDを購入したのは、フルート四重奏曲のCDを持っていなかったこと、武満徹の作品集で体験したDENONの録音の素晴らしさを再び味わいたいと思ったこと、なによりamazonで600円を切る安値だったことがその理由。▼ここで聴くことのできる演奏は、古楽器を使用しているせいがあるのかどうか、モーツァルト臭さがやや抑制されたものになっているように思う。▼それを物足りないと感じる人もいるだろうが、上記のような理由により、ぼくにとっては好ましい。▼ずっとロックを聴いていたせいもあって、音楽に癒しや慰めを求めるよりは、どこか日常と向き合うようなリアリティを求める傾向がある。▼ハイドンやモーツァルトやショパンよりも、ベートーヴェンやマーラーを好むのもそういったせいもあるのだろう。▼しかしながら、このCDを聴いていると、たまにはリアリティなど忘れて、甘く安寧とした世界に浸っていたいという気持ちに陥りそうにもなってしまう。▼そして、そう思わせてしまうだけの美しさがここにはたしかに存在するのだ。▼録音は20年以上昔のものだと感じさせないもので、極めてナチュラルな響きを聴くことができる。

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by ok-computer | 2011-10-22 14:35 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

『ウディ・アレンの夢と犯罪』

▼ 『ウディ・アレンの夢と犯罪』鑑賞。▼この映画の邦題は少しややこしくて、劇場公開時とセルDVDについては『ウディ・アレンの夢と犯罪』なのだが、レンタルDVDは『カサンドラズ・ドリーム 夢と犯罪』という異なるタイトルになっている。▼ウディ・アレンのファンは劇場で観るかDVDを購入するだろうから、レンタル版はユアン・マクレガーやコリン・ファレルのファン、あるいは一般的なサスペンス映画好きをターゲットにしたということだろうか。▼僕のようにレンタルでウディ・アレンの映画を観るようなファンにとっては不親切というか、利用しているレンタルショップでも長く探し当てることができず、今回たまたま別の映画を探しているときにようやく巡り会うことができた。▼内容に関しては「夢と犯罪」というより、「罪と罰」という方が近い。▼犯罪そのものよりも、人はどのようにして罪を犯すに至るのか、そして罪悪感をどうやり過ごすのか、あるいはそれに押しつぶされてしまうのか、といったことに焦点が当てられている。▼『マッチポイント』ほど鮮やかな仕掛けはなく、ウディ・アレン色が抑えられた映画だと思われているが、軽妙洒脱な台詞のやりとり(と量)やペシミスティックなエンディングなど、アレンならではのテイストを探すのはそれほど難しいことではない。
by ok-computer | 2011-10-17 19:01 | 映画 | Trackback | Comments(0)

2011/10/13

▼ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを聴く。▼すでに全曲録音が完成しているアリーナ・イブラギモヴァとセドリック・ティベルギアンによるシリーズのうちの最初の一枚で、1・4・7・8番が収められている。▼ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは作曲家の初期から中期にかけて作られたものがほとんどなので比較的明るめの作品が多い。▼僕自身、ベートーヴェンの作品では、ピアノ・ソナタや弦楽四重奏曲よりも先にヴィオリン・ソナタに親しんだ経験がある。▼いかにもベートーヴェンらしい勇ましさの感じられる4番の第一楽章、メロディ・メイカーとしての才能を存分に発揮する8番の第二楽章の美しさ。▼なぜかクラシックの世界では通称や愛称のついた曲のほうが取り上げられる傾向があるので、5番『春』や9番『クロイツェル』ほど有名ではないが、4番や8番のソナタも、質においても親しみやすさにおいても前述の2曲に決して負けてはいないと思う。▼自然な録音によるヴァイオリンとピアノの美しい響きと、作品自体の素晴らしさとによって、82分を超える長時間録音ながら、途中でダレることもなく心地好く聴かせてもらった。

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by ok-computer | 2011-10-13 22:19 | 音楽 | Trackback(1) | Comments(0)

2011/10/11

▼ルー・リードの『トランスフォーマー』を聴く。▼村上春樹の「レキシントンの幽霊」を読んでいたら、アナログレコードを聴きたくなってセレクトした一枚。▼このレコードと、同じくルー・リードの『ベルリン』、そしてヴェルヴェット・アンダーグラウンドの1stはどれも十代半ばの同じ頃に聴いた。▼ロックの名盤としてよく挙げられていたし、どこか危険で甘美な世界、自分では経験したことがないし、おそらく経験することもないであろう世界の扉を垣間見せてくれるような気がしたものだ。▼とにかくよく聴いたレコードなので、久しぶりに聴き返してみても意外な印象を受ける箇所がどこにもなかった。▼十代の頃は今のようにたくさんレコードを買うことができなかった分、それだけ一枚一枚を深く大切に聴いていたということなのだろう。▼それにしても、以前取り上げたディランの『ブロンド・オン・ブロンド』と同じく、アナログ盤の音が思ったよりも悪くない。▼学生の頃よりもアナログプレーヤーのグレードが(少しだけ)上がっているせいもあるだろうが、特に最近のロック系のCDに顕著な、異常ともいえる高い録音レベルではなかなか感じ取ることのできない、アナログならではの暖かみのある再生音がそう感じさせるのかもしれない。▼きっと音楽はいつ作られたかではなく、その音楽をいつ聴いたかによって、聴き手に与える印象が左右されるのだろう。▼初めて聴いたとき、すでに『トランスフォーマー』は過去の名盤だったが、僕にとってはリアルな音楽だった。▼一曲目の「Vicious」において左チャンネルから聴こえてくる、電動ノコギリのようなギターを聴くだけで、それは僕を十代の頃の世界へと戻してくれるのだ。

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by ok-computer | 2011-10-11 08:36 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2011/10/9

▼YMOの『テクノデリック』を聴く。▼YMOのアルバムではこれが一番気に入っている。▼ひとつ前の『BGM』も曲は良いが、サウンド的に少し不満がある。▼『テクノデリック』はオーディオ的な音の良さだけでなく、坂本龍一の傑作『B-2 Unit』にも似た、パーカッシヴでメタリックな音の質感が素晴らしい。▼YMOはプロデューサーを兼ねている細野晴臣がサウンドカラーを決定付けている部分が大きいように感じられるが、このアルバムではかなり坂本寄りのサウンドになっていると思う。▼「体操(TAISO)」は当時シングル用のコミックソングだと思っていたが、細野の坂本に対する「ジョン・ケージみたいなミニマルな曲を」というリクエストに応じて作られた、という裏話などを知って改めて聴いてみるとなかなか面白い。▼ただ、坂本が意識したのはケージではなく、スティーヴ・ライヒのような気がするが。▼また、このアルバムには「灯(LIGHT IN DARKNESS)」「後奏(EPILOGUE)」という、僕がYMOのなかで一番好きな2曲が収められている。▼「後奏」の背景にずっと流れる音は鉄工所のノイズをサンプリングしたもの。▼このアルバムが発表された1981年といえば、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンやデペッシュ・モードがやっとデヴューした年で、アート・オブ・ノイズはまだ存在していなかった。▼そういった事実関係を踏まえてみると、今さらながらYMOの先駆性が理解できるような気がする。

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by ok-computer | 2011-10-09 21:29 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2011/10/6

▼ナッシュ・アンサンブルによるベートーヴェンとメンデルスゾーンを聴く。▼ロンドンのウィグモア・ホール自らが立ち上げたレーベルからのリリース。▼ベートーヴェンのクラリネット三重奏曲『街の歌』は初めて聴く作品で、クラリネット、ピアノ、チェロという珍しい編成の作品。▼第一楽章の冒頭から、いかにも初期のベートーヴェンらしい旋律を聴くことができる。▼言葉で説明するのは難しいが、決して軟弱ではないロマンティシズムの響きとでも言おうか。▼もう一曲はメンデルスゾーンの八重奏曲。▼これまでに聴いたメンデルスゾーンのなかで僕が一番好きな曲。▼なかでもこの作品の第一楽章は、シューマンのピアノ五重奏曲の第二楽章と並んでロマン派最高の瞬間だと考えている。▼霧に覆われていた空が晴れ渡っていくような、青春の歓喜と憂愁とが入り混じったような、そんな情景や感情が思い浮かんでくる。▼録音は加工された跡の感じられない生々しいもので、室内楽の愉しみを存分に味あわせてくれる。

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by ok-computer | 2011-10-06 21:29 | 音楽 | Trackback | Comments(0)