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音楽の海岸

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2011/11/26

▼坂本龍一の『左うでの夢』を聴く。▼『B-2 Unit』と『戦場のメリークリスマス』の間に挟まれて、あまり取り上げられることのない作品かもしれないが、ぼくはとても好きなアルバム。▼傑作『B-2 Unit』の流れを汲むニューウェイヴ的なサウンドで、凝ったリズムが先鋭的な響きを醸しだしている。▼また、ボーカル曲が多いのもこのアルバムの特徴のひとつ。▼一般的に坂本のボーカルは下手だと思われていて、それに対して積極的に反論するつもりはないが、頼りなげで儚い声はその音楽には相応しいものであると感じる。▼少なくとも、後に起用するバーナード・ファウラーのような筋肉質な声よりはずっと良いと思う。▼最近NHKで放映されている『スコラ 音楽の学校』、あるいは社会的な発言などにおいて、坂本氏の姿をメディアで見かけることが多くなったが、そこには知的な鋭さだけでなく、穏やかな寛容とも言えるような姿勢が感じられて、以前よりずっと好感を持つようになった。▼『NEO GEO』や『Beauty』における、沖縄音楽との絶妙な親和性も捨て難いが、『B-2 Unit』、『左うでの夢』、そして『音楽図鑑』が、いまのところ坂本龍一のベストだと感じている。

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by ok-computer | 2011-11-26 00:18 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2011/11/21

▼ウェイン・ショーターの『ナイト・ドリーマー』を聴く。▼ブルーノート移籍後第一弾のアルバムであり、ショーターの黄金期の幕開けを告げる作品でもある。▼この後すぐ、マイルスのバンドに加入し、自身のリーダー作とマイルスのアルバムとの両方で優れた作品を立て続けに発表する。▼よく比較されるコルトレーン、あるいはマイルスやエリック・ドルフィーなどとは違って、音楽以外にドラマ性をあまり感じさせない人なので、偏愛の対象にはなりにくいのかもしれない。▼しかし、音楽は素晴らしい。▼いや、音楽だけがただひたすら素晴らしいと言うべきか。▼この辺り、ハービー・ハンコックなどと同じく、いわゆる新主流派に通じる特徴なのか、過去のドロドロしたジャズミュージシャン伝説とは隔絶した清々しさがあると思う。▼アルバムに収められた楽曲はどれも素晴らしいが、やはりタイトル曲が醸し出す、都会の夜のしじまへと消えてゆく幻想、とでもいうような雰囲気は格別だ。▼ジャケットデザインもちょっと不思議で浮遊感のある、収められた音楽を端的に表現したもので、秀逸。

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by ok-computer | 2011-11-21 20:28 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2011/11/19

▼マイルス・デイビスの『ウォーター・ベイビーズ』を聴く。▼1967年から68年にかけて行われたセッションのなかから未発表曲を集めて構成し、マイルスが休業中の1976年に発売されたアルバム。▼ミュージシャンの最盛期の未発表作品は、ピークを過ぎた後の正式なアルバムよりも面白いと常々思っているのだけれども、これもそのケースに当てはまるかもしれない。▼少なくとも復帰後のマイルスのアルバムよりはこっちのほうが良いと思う。▼この時期、自身のリーダー・アルバムをブルーノートで次々と発表するのと同時にマイルス・バンドの音楽監督でもあったウェイン・ショーターが6曲中4曲を書いていて、ショーターにとっても創作のピークを記録したアルバムのひとつだと言えるかもしれない。▼だけども、よく言われるようにショーターの曲であっても音はマイルスの音に他ならない、というところが凄い。▼このアルバムに限らず、マイルスと共演するミュージシャンは、マイルスに認められたい、認められれば成功する、といった意識があったのかどうか、他ではみられないような緊張感の高い演奏になってることが多くて、それがまたマイルスの音楽を特別なものにしていると思う。

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by ok-computer | 2011-11-19 08:09 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2011/11/13

▼リヒャルト・シュトラウスの歌劇『ダフネ』を聴く。▼普段オペラは好んで聴くほうではないが、シュトラウスのオペラだけは別格的に愛聴している。▼オペラに限ったことではないが、シュトラウスはソプラノの使い方が本当に巧くて、ハイトーンが長く持続する旋律によって音楽に華やかさと陶酔感をもたらし、その陶酔に共鳴できる者にとっては気が遠くなるような体験ができる。▼シュトラウスには『サロメ』や『エレクトラ』のような過激な路線のオペラもあるが、この作品は『ばらの騎士』のような旋律の美しさが際立つもの。▼お得意のソプラノの聴かせどころもたっぷりとある。▼もちろんバスやテノールのソロもあるのだが、ソプラノが登場するのが今か今かと待ち遠しくなる(笑)▼もうひとつ印象的だったのが、最後のオーケストラによる後奏部分がオペラにしては異様に長いことで、さすがにそのまま終わってしまうのはマズいと思ったのか、エンディングに「ラララ~」と申し訳程度にコーラスを入れている(笑)▼録音はレベルが少し低めだが、EMIにしては優秀な部類だと思う。▼何より、選択肢の少ないこのオペラにとって今回の再発は非常にありがたい。

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by ok-computer | 2011-11-13 22:30 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2011/11/10

▼ビーチ・ボーイズの『スマイル・セッションズ』を聴く。▼今回のリリースによって、ブライアン・ウィルソン自身はもちろん、多くのファンにとっても画竜点睛を欠く状態からやっと解放されるような想いがするのではないだろうか。▼もっとも、『スマイル』の音源はオフィシャル・リリースだけでもかなりの数に上るし、2004年にはブライアンによる再録音版『スマイル』が出ているので、今このアルバムを聴くことによる驚きのようなものは緩和されてしまってはいるが、それでもオリジナルの音源を用いて編集されていること、今では失われたブライアンの美しいファルセットボイスやビーチ・ボーイズの面々の素晴らしいコーラスワークによって全篇を聴くことができるというのは、やはり格別だ。▼ブライアン版『スマイル』はひたすらに明るくアッパーな音楽だったが、ビーチ・ボーイズの音はこの当時の彼ららしく、光と同時に、あるいはそれ以上に影の部分を強く感じさせる、コントラストの際立つ内省的なものになっている。▼これを聴くと、ブライアンの『スマイル』を聴いたときもそうだったが、制作半ばで破棄が伝えられていた『スマイル』が実はあとほんの少しで完成するはずだったことがよく分かる。▼いくつかのボーカル・パートを追加して、あとは編集作業をするだけ、といった段階まで来ていたのではないだろうか。▼それでいて完成できなかったのは、当時のブライアンの置かれた状況と状態のせいがあったのかもしれない。▼『スマイル』はロック史に残されたとても大きな穴だったように思う。▼そして、それを自分の内なるものとして、誰よりもずっと見つめていたのはブライアン・ウィルソンだったのだろう。▼44年という長い歳月を経て、今ようやくその穴が埋められようとしているのかもしれない。

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by ok-computer | 2011-11-10 20:33 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2011/11/5

▼ギュンター・ヴァント指揮によるブルックナーの交響曲全集を聴く。▼アマゾンで2000円を切る価格で購入。▼もはや輸入盤CDに関しては価格と価値の間には何の関連性もないことを実感。▼フルオーケストラで轟音に近い音で奏でられるブルックナーの交響曲だが、マーラーのように突き刺さってくるのではなく、聴き手を包み込むような、まるで音の海に浮かんでいるかのような安らぎを憶える場面が多い。▼老境に差し掛かった指揮者がこの作曲家を好むのはこんなせいもあるのかもしれないとも感じる。▼日本ではヴァントは晩年になってようやく注目された指揮者というイメージがあるが、1974年から81年にかけて録音されたこの全集はドイツ・レコード批評家賞を受賞しており、そのレッテルは誤りであることが分かる。▼晩年に較べ、早目の引き締まったテンポで演奏されるが、軽い響きに陥ったり、金管の迫力に欠けるようなことは無い。▼形容が難しいが、華やかさはないのかもしれないものの、地に足の着いた、深いところで感銘の受ける響きが全集を通して持続する。▼セッション録音にも関わらず、第4番の第一楽章の50秒付近で咳の音が聴こえたり、第6番では音割れのする箇所があったりするが、全体的にはリマスタリングの効果があるのか、録音は良好。

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by ok-computer | 2011-11-05 22:39 | 音楽 | Trackback | Comments(0)