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音楽の海岸

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小川洋子『最果てアーケード』

▼小川洋子の『最果てアーケード』を読了。▼コミックの原作ということで一抹の不安を感じたが、蓋を開けてみればいつもの小川ワールドでひとまずは安心する。▼構成的には『人質の朗読会』に引き続き、連作短篇集の体裁をとっているが、一編ごとの独立性が高い『人質の朗読会』と較べると、『最果てアーケード』は収められたそれぞれの短篇が全体を構成するピースのひとつであるという性格がより強くなっていると思う。▼特に「勲章店の未亡人」以降は、それまでのアーケードの店主とお客さんとの物語から、語り手であるアーケード管理人の娘の物語へと徐々にシフトしていく。▼ある程度の小川作品に触れたことがある人なら途中から展開が読める、というかそのように書かれてあるのだが、おそらくほとんどの読者の予想通りに進んでいってしまうところが逆に哀しい。▼ある意味では残酷と言ってもいいかもしれないような切ない物語が、美しい文体によって綴られていくことでより一層際立つことになる。▼生と死の共存、静かな締念のようなものは、これまでの小川作品のなかでもみられたテーマだが、だからといってありふれたものに陥ることなく、さざ波のように静かに読者の心を打つ。

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by ok-computer | 2012-08-13 22:18 | 文学・本 | Trackback | Comments(0)

2012/8/12

▼ティム・ハーディンの『Tim Hardin 1』を聴く。▼ティム・バックリイやニック・ドレイク、そしてグラム・パーソンズと並ぶ、60年代後半にデビューした、儚くも心を打つ美しい作品を残す一方で、(薬がらみの)不幸な人生を送ったアーティストのひとり。▼特にこの人は奥さんのスーザン・ムーアさんとの関係で印象が強い。▼なぜ有名人でもない奥さんのフルネームを知っているかというと、『Tim Hardin 2』に収められた「The Lady Came from Baltimore」という曲で実名が出てくるうえに、『Suite for Susan Moore and Damion』という家族をテーマにしたアルバムまでリリースしているから。▼しかしながら、その家族をテーマにしたアルバムを出した後に奥さんは彼の元を去ってしまう。▼後のアルバムのなかでハーディンは彼女が他に男を作ったというようなことを歌っているが、実際にはヘロイン中毒の彼と一緒にいることができなくなったためとも言われている。▼真相はよく分からないが、はっきりしているのはこの出来事の後、アーティストとしても一個人としてもティム・ハーディンの転落が始まっていったということだ。▼もちろんこういった話は彼の音楽の価値を左右するものではないが、彼自身どちらかというと公私混同タイプのアーティストだっただけに少しは意識せざるをえないのかもしれない。▼『Tim Hardin 1』で聴くことのできるハーディンの音楽はフォークとブルースに根ざしながら、そこにジャズ・フィーリングも幾分加味した、おそらく当時としては珍しくて画期的なもの。▼「Reason to Believe」はロッド・スチュアートを始めとして多くのミュージシャンが取り上げたこともあってアルバムのなかでは有名な一曲だろう。▼カバーされると大抵この曲の情緒的な側面が強調されるが、ここではシンプルかつ苦みを効かせて、やはり作者本人のヴァージョンが一番良いと思わせられる。▼他にも「Don't Make Promises」「How Long」「Misty Roses」「How Can We Hang On to a Dream?」といった名曲が目白押しで、久しぶりに聴いてみて改めてその素晴らしさに驚かされた。▼ハーディンは1980年12月29日、ジョン・レノンの死のちょうど3週間後にヘロインの過剰摂取によって39歳で亡くなるが、彼の完成させた最後のアルバム『Nine』は、その7年も前にリリースされたものだった。

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by ok-computer | 2012-08-12 18:08 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2012/8/5

▼ボビー・ハッチャーソンの『Happenings』を聴く。▼大好きなエリック・ドルフィーの『Out to Lunch!』のヴィブラフォン奏者が彼だったことと、ブルーノートらしい印象的なジャケットに惹かれて購入したが、これが大正解。▼『Out to Lunch!』やマイルス・デイビスの『Bags Groove』、ジャンルは異なるがティム・バックリイの『Happy Sad』など、ヴィブラフォンがフューチャーされたお気に入りのアルバムに新たな一枚が加わったという気がする。▼ホーン奏者がいない編成ということもあってか、ハッチャーソンと負けず劣らずにハービー・ハンコックのピアノが活躍する。▼ハンコックの代表作のひとつ「Maiden Voyage」も取り上げられていて、本人参加ということもあって手堅い出来だが、このアルバムに収録する必然性は無かったかも。▼リゾート風の「Rojo」、スパイ映画のサントラのような「Head Start」など、ハッチャーソンのオリジナル曲が素晴らしい。▼極めつけは「When You Are Near」で、これはミシェル・ルグランにタメを張るような名バラード。▼歌詞をつけて、スコット・ウォーカーあたりに歌わせれば大ヒットしたのでは?と思ってしまうくらい。

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by ok-computer | 2012-08-05 23:05 | 音楽 | Trackback | Comments(0)