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音楽の海岸

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チャールズ・ミンガス『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』

▼チャールズ・ミンガスの『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』を聴く。▼ここのところ、ぼくのなかでミンガス・ブームのようなものが起きているが、きっかけはこのアルバムのタイトル曲の良さに気づかされて以降のこと。▼それまでにもミンガスの音楽は少しは知っていたが、必ずしも良い印象を持っていたわけではなかった。▼それが「Pithecanthropus Erectus」を突破口にして、突然ミンガスのことを理解できたように思えて、大量の音楽(今のところアルバム8枚)が急速に耳から頭に流れ込んできている。▼このアルバムの好き嫌いを分ける分水嶺になっているのはきっと2曲目の「A Foggy Day」だろう。▼ジョージ・ガーシュウィンのスタンダード・ナンバーであるこの曲を演奏するにあたって、ミンガスはクラクション、警官のホイッスル、救急車のサイレンなどを模した音を多用したユニークなアレンジを施している。▼実はそれらの装飾音を除けば、テーマを崩して弾いているわけでもなく、ごく真っ当な解釈をしているのだが、多くの人はそこに辿り着く前に面食らってしまうのだろう。▼しかしながら、作曲者のガーシュウィン自身も「パリのアメリカ人」においてクラクションなど都会の喧噪を管楽器によって表現する手法を既に採用しているし、「A Foggy Day」という曲はロンドンという都市について歌っている曲なのだから、ミンガスのアレンジも的外れというわけではない。▼ちょっと露骨すぎるとは言えるかもしれないけれど。▼ちなみにウィキペディアによると、かのマイルス・デイビスが自分も「A Foggy Day」をレコーディングしようとしたが、ミンガスの演奏が素晴らしかったため、レパートリーにするのをやめたという述懐が紹介されている。▼たしかにミンガスほど個性的なものにはならなかったかもしれないが、きっとスタイリッシュな演奏になったであろうマイルスのヴァージョンも聴いてみたかったような気もする。

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by ok-computer | 2013-03-31 00:28 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

チャールズ・ミンガス『Mingus Dynasty』

▼チャールズ・ミンガスの『Mingus Dynasty』を聴く。▼これもジャケットのデザイン・センスが微妙で、いくらタイトルが『ミンガス王朝』だからといってこれはないんじゃないかと思う。▼これではチャールズ・ミンガスのことを何も知らない人がジャケ買いすることはまずないだろう。▼しかしながら、内容的には掛け値なしの傑作なのだから困ってしまう(別に困らないか)。▼ミンガスの音楽のことをネットで検索すると「難解」という単語を使って解説している文章に出会うことが多く、ぼくも彼の音楽を聴く前にはそのイメージがインプットされていたが、実際に聴くとなんてことない、とてもわかりやすい音楽である。▼このアルバムは大きめの編成ということもあってか、ソロ部分が少なく、隅々までミンガスの統制がとれている(ように聴こえる)無駄の無いタイトな作品なのでとても聴きやすい。▼ミンガスのオリジナル曲も相変わらず素晴らしく、なおかつアルバムごとに趣向を変えていて、今作ではフルートやヴィブラフォンの導入がフレッシュな印象を与えてくれる。▼オープニングの「Slop」の演奏後に、プロデューサーのテオ・マセロ(だと思う)が「Beautiful!」と漏らすのがそのまま収められているが、それはこのアルバムの性格を端的に表したものだと思う。

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by ok-computer | 2013-03-24 00:11 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』

▼村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』を読了。▼これは初期三部作の続編で、ぼくはまだ『羊をめぐる冒険』は読んでいない(持ってはいるのだけど)のだが、まったく違和感なく読むことができた。▼おそらく村上春樹の長編小説はどれも、途中から始まって途中で終わるような作品ばかりだからなのだろう。▼ぼくの村上作品に対する評価というのは、世間一般的なそれとは異なるようで、『ノルウェイの森』は二度読んでみても積極的に嫌いだと言えるような作品だったし、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は嫌いではないにしろそれほど素晴らしいと感じることはできなかった。▼そして、この『ダンス・ダンス・ダンス』は世評的にはあまり宜しくない作品らしいのだが、逆にぼくはとても気に入った。▼もしかしたら『海辺のカフカ』と並んで、ぼくにとっての村上作品ベストを争う位置を占めるかもしれない。▼他人からあまり理解されないという、主人公の下らない冗談を含めて、とにかく読んでいて楽しい。▼そして、ビーチ・ボーイズ、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、カルチャー・クラブ、トーキング・ヘッズ、ラビン・スプーンフル、ジョン・コルトレーンなどなど、全編に渡ってたくさんの音楽が鳴り響いている。▼改めて思うのは、パラレル・ワールドに対する執拗なまでのこだわりで、これは『世界の終り~』『ねじまき鳥クロニクル』『アフターダーク』『1Q84』などにも共通する部分であり、村上作品を読み解く重要なポイントになるのかもしれない。
by ok-computer | 2013-03-23 20:23 | 文学・本 | Trackback | Comments(0)

チャールズ・ミンガス『Oh Yeah』

▼チャールズ・ミンガスの『Oh Yeah』を聴く。▼これはびっくり驚きの傑作。▼このアルバムでミンガスはベースを弾いておらず、ピアノとボーカル(!)を披露している。▼ベースを担当したのはダグ・ワトキンスだが、ミンガスのアルバムでミンガスの代わりにベースを弾くなんてきっと緊張しただろう。▼考えてみれば、ベースで作曲することはないだろうから、ミンガスは日常的には結構ピアノを演奏する機会があったのかもしれない。▼ミンガスのボーカル・スタイルは、それまでの作品の合間でも聴くことができた彼の咆哮の延長線上にあるような感じで、トム・ウェイツの『Swordfishtrombones』や『Frank's Wild Years』、それにキャプテン・ビーフハートの音楽が好きだというリスナーであれば気に入るようなタイプかもしれない。▼変な言い方になるかもしれないが、ミンガスの音楽にミンガスのボーカルはまるで違和感なくぴったりと嵌まっているという感じがする。▼理性より天性が優った音楽というか、きっと天才というのはこういう人のことを言うのだろうな。

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by ok-computer | 2013-03-06 21:49 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

チャールズ・ミンガス『The Clown』

▼チャールズ・ミンガスの『The Clown』を聴く。▼冒頭の「Haitian Fight Song」、これはミンガスを好きになるか嫌いになるかの試金石のような曲だろう。▼いきなりミンガスのソロから始まるが、序奏に続いて登場するテーマ、これが最高に格好良い。▼その後はだんだんとバンドの音が積み重なり、ついにはカオスのような状態になっていくのも大変素晴らしい。▼邦題は「ハイチ人の戦闘の歌」となっていて、それはまあそうなのだけれども、ここは素直に「Haitian Fight Song」、先入観なしに聴いてみてほしい。▼考えてみれば、チャールズ・ミンガスはオーネット・コールマンと並んで、日本のジャズ・ファンには見過ごされがちなアーティストなのかもしれない。▼ふたりともオリジナル曲が中心で、スタンダードナンバーはあまり演らず、取り上げたとしても捻った形で演奏することがあるのが共通項だろうか。▼まさかスタンダードを演らないから日本のジャズ・ファンには受けが悪いというわけではないだろうが、オリジナル中心であるがゆえに取っ付き難いイメージはあるのかもしれない。▼しかしながら、『The Clown』を聴いていると、それが間違った先入観であることが実感させられる。▼とにかく笑ってしまうくらい分かりやすくて(もちろん格好良くて)、ナレーションの入ったタイトル曲などはサーカスの音楽みたいで、これはちょっとやりすぎなくらいの分かりやすさだ。▼このアルバムの前作『直立猿人』(これも先入観を誘う邦題)もそうだったが、ジャケット・デザインがイケてなくて、そういった部分でも損をしているのかもしれないが、内容はどちらも最高である。

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by ok-computer | 2013-03-04 22:19 | 音楽 | Trackback | Comments(0)