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音楽の海岸

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ミラン・クンデラ『別れのワルツ』

▼ミラン・クンデラの『別れのワルツ』を再読了。▼毎年ノーベル賞の時期になると、今年こそ村上春樹氏受賞か!?とかまびすしいが、90年代ごろはクンデラが有力候補として挙がっていたのを思い出す。▼二人ともいまだ受賞は叶っていないが、クンデラの場合は数年前にスパイ密告疑惑(もちろん本人は否定しているが)が持ち上がったために、今後も難しいのかもしれない。▼『別れのワルツ』を読み返すのは、おそらく15年以上振りくらいになるだろうが、存外面白かった。▼きっと以前は勧善懲悪や社会的モラルといった観点からは遠く離れたところにある、この小説の在り方みたいなものに違和感を持ったのかもしれない。▼(不妊治療の患者に、自らの精液を注入するマッドな医者!)▼今回はそれが感じられなくなったのは、年月を重ねて寛大になったのか、こだわりがなくなったのか、おそらく色んな小説に触れることによって、小説はこうあるべき!的な思い込みがなくなってきた(あるいは、分からなくなってきた)のだろう。▼この作品の特色として、クンデラ作品では通例の、作者の哲学的考察風エッセイの物語への挿入が見受けられないことで、それはクンデラの魅力のひとつではあるのだが、エッセイ的記述の欠如によって、ストーリーそのものに読者を集中させてくれる効用はあるので、こちらのほうが読みやすく感じる向きもあるかもしれない。▼歴史と運命と愛をめぐる輪舞は、物語後半に一粒の毒薬が登場することによって、その加速度をさらに増して、読む者に魅惑的な目眩をもたらしてくれる。

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by ok-computer | 2013-10-16 19:07 | 文学・本 | Trackback | Comments(0)