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音楽の海岸

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坂本龍一『/04』『/05』

▼坂本龍一の『/04』と『/05』を聴く。▼アルバムの大部分は過去の自作曲をピアノ用に再アレンジしたもので占められているのだが、「戦メリ」や「ラストエンペラー」のような代表曲ばかりでなく、あまり知られていない曲やここでしか聴けないレア音源も含まれている。▼新曲が次々出来る状態であれば過去曲を再演する必要はなく、だいたいにおいてミュージシャンがセルフカヴァーを試みるようなときは才能が枯渇しつつあるというのが相場であって、坂本龍一の場合も21世紀以降オリジナルアルバムの創作ペースは落ちてきているのだが、これらのアルバムは悪くない、というかぜんぜん悪くない。▼「Riot In Lagos」や「Thousand Knives」といった、打ち込みで緻密なアレンジを施されていた楽曲がピアノ用に(オリジナルよりは)シンプルな形でリアレンジされることによって曲本来が持つ核のような部分が抽出されて響いてくるような印象がある。▼「Thousand Knives」のサビが2回繰り返される部分のダイナミクスの変化の表現はピアノのほうが向いているのではないかと思ったくらい。▼以下、それぞれのアルバムで気に入った曲を1曲ずつ。▼『/04』収録の「+33」はルイ・ヴィトン150周年を記念して制作された楽曲。▼スティーヴ・ライヒ的なピアノの執拗なトレモロを繰り返すバックトラックのうえに、ラヴェルを思わせるような旋律が乗せられる。▼こういうのは普通のポップ・ミュージシャンには知識がなくて出来ないし、現代音楽家にとっては厚かましくてやはり出来ないし、ある意味坂本龍一のポジションだからこそ出来ることなのかもしれない。▼『/05』では「Happyend」。▼元々は坂本のシングル「フロントライン」のB面に収録されていた曲だが、一番多く聴かれてきたのはYMOの『BGM』に収められたヴァージョンではないだろうか。▼ただ、『BGM』のヴァージョンはダブの手法で主旋律を削除するようなミックスが施されているため原曲の良さがまったく損なわれているし、原曲もシンセの音色などが現在だと古めかしく聴こえてしまう。▼『/05』のヴァージョン(ピアノ4台の多重録音)によって、ようやく楽曲が持つ真価が分かりやすく伝わるようになったという感慨、この曲だけのためにアルバムを購入しても損はない。

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by ok-computer | 2014-01-20 18:22 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

坂本龍一『Beauty』

▼坂本龍一の『Beauty』を聴く。▼『ラストエンペラー』のあと、本格的な海外進出第一弾アルバムということもあってか、かなりの気合いの入りようで、1曲目「Calling from Tokyo」冒頭の三線の響きを聴くだけでそんな力感のようなものが伝わってくる。▼ブライアン・ウィルソン、ロビー・ロバートソン、アート・リンゼイなど豪華ゲストが参加しているが、なかでもオキナワチャンズとユッスー・ンドゥールは多くの曲でメインあるいはバック・ヴォーカルとしてフューチャーされており、今作の顔というか、音のカラーみたいなものをある意味で決定付けていると思う。▼カバー曲が多い(5曲)のもこのアルバムの特徴だが、ストーンズの「We Love You」とバーバーの「Adagio」は選曲もベタだし、アルバムのなかでさほど際立った印象も受けず、なぜ取り上げたのかやや意図を計りかねる。▼しかし残りのカバー曲である「安里屋ユンタ」と「ちんさぐの花」という沖縄の曲と、フォスターの「金髪のジェニー」に沖縄方言の歌詞をつけて、アレンジも沖縄音楽風にした「Romance」の3曲は間違いなく今作のハイライトだといえる。▼「ちんさぐの花」の長い間奏部分において、同じフレーズを繰り返す三線のバックで、坂本のシンセイサイザーの音が慎ましくも美しく絡んでいく様は圧巻で、ちょっとしたトリップ感を味わえる。▼日本・アメリカ・カナダ・中国・セネガルなど、様々な国籍のミュージシャンが参加し、それぞれの個性がブレンドされて、まさにハイブリッドな音楽が生み出されている。▼それはどこの国の人が聴いても異国風に聴こえる音楽、つまりはワールド・ミュージックに他ならないのではないか。

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by ok-computer | 2014-01-12 22:27 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

マーラー『亡き子をしのぶ歌』

▼マーラーの『亡き子をしのぶ歌』を聴く。▼この曲集を完成させた4年後にマーラー自身が娘を亡くすという出来事があったために呪われたイメージというか、なにかと曰くありがちに語られることが多い。▼作曲している間はまさか自分も娘を亡くすとは露ほども思っていなかったのかもしれないし、あるいは交響曲第6番『悲劇的』と創作期間が重なることから、その時期マーラーがダークな題材に惹かれていたということもあるかもしれない。▼とはいえ、幼い娘を持つ親の身にありながら、わざわざこのような題材を取り上げたことに対して詮索されるのこともまた致し方ないことなのかもしれない。▼そんな作品のミステリアスな背景はひとまず置いておくことにして、ケン・ラッセルの映画『マーラー』(傑作!)で印象的に使われていたこともあって、この曲集には比較的早くから親しんできたし、個人的にはマーラーの歌曲で最も好きな作品といってもいい。▼この度は、まず先日取り上げたバーンスタインのマーラー全集の余白に入っていたジャネット・ベイカー独唱による演奏を聴いたのだが、ぼくがこの曲集に抱くイメージとはやや違っていたので、クリスタ・ルートヴィヒの独唱とカラヤン指揮ベルリン・フィルの伴奏による録音で聴き直してみた。▼ルートヴィヒといえば、オットー・クレンペラー指揮の『大地の歌』における名唱が印象に残っているが、この録音でも曲が持つ沈鬱なイメージをいささかも損なうことなく、品の良さと深い響きを感じさせる歌唱を披露しており、痛ましくも美しい作品の素晴らしさとも相俟って、すっかり聴き惚れてしまった。

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by ok-computer | 2014-01-06 20:40 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

マーラー交響曲第3番(バーンスタイン指揮)

▼マーラーの交響曲第3番を聴く。▼レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニックによる演奏。▼現在でも2500円程度で購入できる廉価マーラー全集BOXのうちの一枚。▼紙ジャケットを再現しているのはいいのだが、ダブル・ジャケットの内側からCDを取り出す仕様になっており、ジャケットやCDを痛めずに取り出すにはかなり工夫が必要。▼バーンスタインといえば晩年のマーラー全集が有名で、特に日本(レコ芸関係?)では高く評価されているが、遅い・クドい・暑苦しいの三重苦のような演奏に辟易してしまい、ぼくはすでに手放してしまっている。▼この最初の全集でもテンポに緩急をつけ、聴かせどころで力が入るような熱血系の演奏ではあると思うが、晩年の指揮ほど極端ではなく、なによりそれらが適切なテンポ設定のなかで行われているので、必要以上にバーンスタインのカラーが出ることなく、安心してマーラーの世界に浸ることができる。▼古いアナログ録音の宿命で曲によってはテープのヒスノイズが目立つ箇所もあるが、録音自体は非常に鮮明で、7番のカウベル、ギター、マンドリンなどの音がよく聴き取ることができるのはセッション録音ならではといえる(晩年の全集はすべてライブ録音)。▼3番はマーラーの交響曲でぼくが一番好きな作品なのだが、それゆえにか完全に満足できる演奏にはなかなか巡り会えない。▼これまで聴いたなかで最も理想に近いのはサロネン指揮ロサンジェルス・フィルによる演奏だが、今回聴いたバーンスタインの最初の録音もかなりイイ線をいっている。▼第1楽章と第3楽章のコーダ部分の追い込み、第4楽章のほの暗いムード、第6楽章の歌心といった、ぼくが気になる部分はすべて水準以上でクリアしてくれて、この長大な作品に改めて感銘を受けさせてもらった。

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by ok-computer | 2014-01-05 17:05 | 音楽 | Trackback | Comments(0)