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カラヤン指揮グリーグ・シベリウス作品集

▼カラヤン指揮によるグリーグとシベリウスの作品集。▼元々は3枚のアルバムに分売されていた音源をまとめたもので、結果的にカラヤン名曲集みたいになっているが、素晴らしい楽曲・演奏・録音が揃った文句なしの一枚。▼収められた曲のうち、グリーグの『ホルベルク組曲』をちゃんと聴いたのは初めてだが、聴いた途端名曲であることを確信してしまう(というか、「あ、この曲聴いたことある!」と思ってしまう)作品だ。▼バロック音楽の様式を借りて書かれた楽曲だが、ストラヴィンスキーやシュニトケの、どちらかと言えばパロディの側面の強いそれらとは違って、グリーグはバロック音楽に真っ正面から、かつ大真面目に取り組んだような印象がある。▼ただし、旋律は隠しようもなくロマン派的で、そこがグリークの個性ということになるのかもしれない。▼併録されたシベリウスの管弦楽作品もいずれも名曲・名演奏で、素人のぼくにはカラヤンのシベリウスを批判する人が(とくに日本のクラシック・ファンに)多いのがよく分からない。▼『フィンランディア』はカラヤンにしては珍しく遅めのテンポだが、上手く緩急をつけた説得力のあるもので、これを聴くと他の演奏が「早すぎる」と感じてしまいそうになる、ある意味恐ろしい演奏。

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by ok-computer | 2014-08-30 12:54 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

パブリック・イメージ・リミテッド『album』

▼パブリック・イメージ・リミテッドの『album』(ぼくが持っているのはCDなので『compact disc』というタイトルなのだが)を聴く。▼この作品が発表された当時(1986年)は賛否両論の激しい議論が交わされていたことを記憶している。▼否定派の意見をおおよそ集約すると、「ロックは死んだ」と宣言したジョン・ライドンがこんなに真っ当なロック・アルバムを作るなんて「ジョン・ライドンは死んだ」と言うに等しいではないか、というものだったと思う。▼考えてみると、この当時はまだロックという音楽ジャンルに対して革新性や思想性といったものが当然の如く期待されていた時代だったのだろう。▼そのうえ、ピストルズからP.I.L.の『The Flowers of Romance』 にかけてのジョン・ライドンとは、まさにそういったロックの先鋭性を体現していた人物だったのだ。▼この作品以降、ジョン・ライドンは傾聴に値する音楽を生み出し得ないでいることを思えば、否定派の意見はたしかに的を得ていた部分があったのかもしれない。▼しかし、「ロックは死んだ」と宣った当人がロックを演ることの倒錯した逆説性を用いて、それまでのロックががんじがらめになっていた革新性や思想性といったものから解き放つことによって、ロック音楽が現在に至るまで(なんとかかんとか)延命することができたのもまた事実ではないだろうか。▼このアルバムに関して言えば、シングルとなった「Rise」はもちろん素晴らしいのだが、ハイライトはラストの「Ease」だと思う。▼坂本龍一のオリエンタルなシンセにスティーヴ・ヴァイのヘヴィメタリックなギターが絡み、その上にジョン・ライドンの呪術的なヴォイスが被さる様は無国籍というより多国籍風ごった煮音楽の様相を呈している。▼そして、その世界観はそのまま、同じくビル・ラズウェルのプロデュースによる翌年の坂本龍一のアルバム『NEO GEO』に引き継がれてゆく。

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by ok-computer | 2014-08-28 22:40 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

最近聴いたもの。(ハイドン・チェロ協奏曲、ベック)

▼ハイドンのチェロ協奏曲第1番と2番。▼鈴木秀美の独奏とクイケン指揮ラ・プティット・バンドによる演奏。▼チェロ独奏の音色がバックの音と溶け合うような演奏・録音がなされている(編成が小さいせいもあるかも)。▼バロック音楽と古典派音楽との中間的な響きがする音楽で、日曜の朝の食卓に似合うような雰囲気。▼とても爽やかで、主題も覚えやすく、ソロ・チェリストの標準的なレパートリーとなっているのも納得できる。▼ただし、第1番の楽譜は長い間紛失しており、その筆写譜が発見されたのはようやく1961年になってからとのことで、つまりスタジオレコーディングされたこの作品にはモノラル録音は存在しないということになる。▼これらの協奏曲が録音される場合は、カップリングには『協奏交響曲変ロ長調 Hob.I-105』が併録されることが多く、この盤も例外ではない。▼しかし、この作品については協奏曲とは違って、もはや完全に古典派音楽の響きになっている。▼この第四楽章冒頭を聴くと、いつもベートーヴェンの第九交響曲第四楽章を思い出すのだが、時代的に言っても、ベートーヴェンがこの曲をお手本にしたとしても不思議ではないのかもしれない。

▼ベックの『Morning Phase』。▼ベックはそれなりに聴いてきてはいるのだが、ほとんど処分してしまって、結局手元に残っているのは『Mellow Gold』だけ。▼どれを聴いても、それなりには良いのだが、それなり以上にはならない、適度にオルタナ、適度にメインストリームで、思い切った吹っ切れ方をしてくれない・・・バランス感覚に優れていて、それゆえに人気があるとも言えるのだが。▼なのに、今回のアルバムはとても沁みた。▼シンセの控え目で効果的な使い方が独特の浮遊感を作品にもたらしているのと、アルバム冒頭とラストがとても素晴らしい。▼「Morning」「Blue Moon」「Waking Light」くらいの曲が、8~12曲目の間にもう1曲入っていれば大傑作になっただろうにという気はするが、そんなに簡単に名曲は生まれ出ないのだろう。▼いずれにしろ、前述の3曲はベックがネクストレベルのステージへと進んだことが感じられるような楽曲で、今後の豊かな創作活動をも予感させる。▼歌詞もなかなか素晴らしいので引用しておきたい。▼目覚めの光/君のシルエットが/ひとりの朝を浮かび上がらせる/夜は/時間をかけて朝に明け渡した/わかるまでに十分待った/思い出に取り残され/もう帰ることは出来ない/朝があなたを迎えに来たら/目覚めの光に僕を横たえてほしい(Waking Light)

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by ok-computer | 2014-08-24 17:58 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

最近聴いたもの。(アーケイド・ファイア、ハイドン、ドビュッシー)

▼アーケイド・ファイアの『Reflektor』。▼前作『The Suburbs』は一般的な受けは良かったが、個人的にはまるでクラッシュのレコードでも聴いているような暑苦しさを感じて、イマイチ馴染めなかった。▼やはりこのバンドも、「1stが最高傑作」として後々語られるようなアーティストになるのかと思っていたが、このアルバムはかなりいい。▼元LCDサウンドシステムのジェームス・マーフィーをプロデューサーとして迎えたことが話題だが、とくにDISC2は彼を起用した効果が如実に表れていて、ところどころシンセの音色がニュー・オーダーっぽくなるのが面白かった。▼何よりテクノビートの導入で前作の暑苦しさが軽減されたのが良い(でもまだ暑いが)。

▼シギスヴァルト・クイケン指揮ラ・プティット・バンドによるハイドンの交響曲集。▼クイケンの演奏はスッキリと見通しのよいもの。▼ピリオド楽器の必然性を理屈ではなく聴感として納得させてくれる。▼収録された作品のうち、交響曲第98番については以前も触れたが、やはり素晴らしい交響曲であって、クラヴィーアのソロがあるのも面白いし、標題がついていないことが何とも悔やまれる。▼そして、交響曲第97番もそれに劣らず優れた作品であることが分かったのが今回の収穫。▼なんというか、ハイドンは向こうからはなかなか声をかけてはくれないが、こちらから近づいていけば、汲めども尽きぬ滋味豊かなものを与えてくれるような存在だという気がする。

▼アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリによるドビュッシー『前奏曲第2巻』。▼問答無用の名曲集である『第1巻』に較べ、この『第2巻』については雲をつかむようなアブストラクトな曲が多い印象があって、これまであまり親しんでこなかった。▼ところが先日、BSで放映されていたピエール=ローラン・エマールによる同曲の演奏を聴いたら、これまでになくすんなりと耳に入ってくるような気がして、その後改めてミケランジェリのCDを聴いてみた。▼まったくのド素人なので偉そうなことは言えないが、ミケランジェリの演奏はエマールのそれよりも叙情的であるように聴こえる。▼そして、今までが嘘みたいにつるつると曲が頭に沁み込んでくる。▼クラシック音楽の場合、何度聴いてもなかなか理解できない作品は多いが、それが何かのきっかけ(何であるかは分からない)によって突然理解できるようになることの快感。▼それは音楽を聴くことによって、もしかしたら音楽を聴くことによってしかもたらされない悦びなのかもしれない。

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by ok-computer | 2014-08-22 22:05 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ヤー・ヤー・ヤーズ『It's Blitz!』

▼ヤー・ヤー・ヤーズの『It's Blitz!』を聴く。▼エレクトロニカ・サウンドの導入によって、彼らが大幅な変化を遂げた意欲的な3rdアルバム。▼ただし、現在のわれわれはすでに4th『Mosquito』を聴いているので、それが一過性のものであることを知っているわけだが、個人的には『It's Blitz!』の路線を更に突き詰めてほしい気持ちもある。▼ストロークスもそうだが、こういったニューヨーク系のバンドがエレクトロニカを導入すると、なぜかブロンディっぽくなってしまうみたいで、「Zero」はもちろん、「Hysteric」などもバッキングトラックはそのままでデビー・ハリーに歌わせてみても何の違和感もなさそうだ。▼ぼくはブロンディというバンドにはさほど興味を掻き立てられないのだが、ちょうどニュー・オーダーがインディ・ロックとダンス・ミュージックをクロスオーヴァーさせた先駆者としてイギリスのバンドに多大な影響を与えているように、アメリカ人にとってはブロンディはいまだにインスピレーションをもたらす存在なのかもしれない。▼冒頭2曲はいかにもシングル向きの派手な楽曲を置く一方、「どうしても、ニックのギターを聴きたい!」というギターロック至上主義者のために、中盤には「Dull Life」と「Shame and Fortune」という素晴らしいナンバーを配し、後半は再び打ち込み音の入ったポップな曲を挟みながら、最後は「Little Shadow」でしっとりと閉めるというアルバム構成の妙が光る。▼それを考えると、ぼくが持っているデラックスエディションのボーナストラックである、アルバム収録曲4曲のアコースティックヴァージョンは蛇足かもしれないが、弦楽器を使用したアレンジが新鮮かつ効果的で、いずれもオリジナルと遜色のない出来となっている。

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by ok-computer | 2014-08-17 12:18 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ヴァシリー・ペトレンコ指揮ショスタコーヴィチ交響曲第4番

▼ヴァシリー・ペトレンコ指揮のショスタコーヴィチ交響曲第4番を聴く。▼ペトレンコによるショスタコ交響曲チクルスについてはすでに各方面から絶賛されているが、ぼくが聴いた限りでは出来不出来はともかく、曲との相性みたいなものは結構あるのかなと感じる。▼しかし今回の4番は相性抜群で、素晴らしい演奏・録音だと思う。▼様々な曲想が錯綜し、特に第一楽章と第三楽章については正直言って冗長に感じられることもあったこの複雑怪奇な交響曲が、こんなにも格好良い曲だったんだ!と初めて思い知らされた。▼なかでも第一楽章中盤に出てくる、弦楽器によるフーガ部分の格好良さは、交響曲第8番第三楽章の執拗に繰り返される弦楽器のリズムに匹敵すると思う。▼ウィキペディアによると、この作品の作曲中にショスタコーヴィチはマーラーに熱中し、制作にあたっても参考にしたとのことだが、たしかに第三楽章冒頭の葬送行進曲風のフレーズはマーラーの交響曲第1番第三楽章冒頭部分とほほ同じだし、同じ第三楽章コーダ部分の金管によるコラールの、それまでの雰囲気とは異なる唐突な明るさなどもたしかにマーラーっぽい。(ウィキペディアは参考になるなあ!)▼ペトレンコの指揮はシャープだとか現代的なショスタコ演奏だとか形容されることが多く、たしかにその通りなのだろうけれど、テンポに関しては他の演奏に較べると微妙に遅く、とくに第二楽章ははっきりと遅く感じられるが、響きは(指摘されるように)シャープで弛緩するようなところはなく、鳴らす部分は豪快にオケを鳴らしている。▼若手指揮者による清新な演奏というよりは、ほとんど横綱相撲に近い印象だが、出てくる音の圧倒的説得力によって文句なしに寄り切られてしまう。

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by ok-computer | 2014-08-11 22:02 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

最近読んだもの・聴いたもの。(サリンジャー、ポール・ルイス、マニックス)

▼サリンジャーの『フラニーとズーイ』。▼サリンジャーは『ライ麦畑』の次に読んだ『ナイン・ストーリーズ』にさほど感銘を受けず、それ以来縁遠い作家だったが、今回は例の例なる村上春樹の新訳が出たので手に取ってみた。▼驚くのは、「議論小説」と村上氏が解説で述べているように、作品のほとんどが登場人物たちの交わすディスカッション的な台詞で占められていることで、地理的なダイナミズムみたいなものは無いに等しい。▼これだと物語的には退屈になってしまうような危惧がするし、実際ぼくも途中のいくつかのポイントではそのような想いに捕らわれそうにもなった。▼それでも読み続けられたのは、この(展開の乏しい)話にどう決着をつけるつもりなのか?という興味があったからで、その点については期待を裏切られるようなこと(または、不安が的中するようなこと)はなかった。▼この偏差値の高い中二病のような作品にこんな読後感爽やかなエンディングが待っているとは!お見事。

▼ポール・ルイスの演奏による、シューベルトの『ピアノ・ソナタ第17番』。▼これも村上春樹つながりで、『海辺のカフカ』や『意味がなければスイングはない』のなかで言及されていた作品。▼この曲がシューベルト最高のソナタかどうかは怪しいところだが、いまさら最後の3つのピアノ・ソナタについて村上氏が触れても面白くも何ともないし、ぼくのように彼が取り上げたことで興味を持つ人もいるだろうから、やはり慧眼というべきだろう。▼シューベルトのソナタといえば、その長大さ・冗長さがよく言われるが、スケルツォやロンドがいずれも8分を超えるというのは一般的な基準からすればやはり長い。▼とはいうものの、この辺りはもう少し聴き込む必要がありそうだ。▼というのも、第2楽章はさらに長くて10分を超えるが、その美しさゆえに「天国的な」長さに感じられるのだから。

▼マニック・ストリート・プリーチャーズの『Futurology』。▼これは予想外の傑作で、このバンドにまだこれだけのアルバムを作ることのできるポテンシャルがあったことに驚いた。▼このアルバムと同時期に制作され、昨年先行リリースされた『Rewind the Film』については全編聴いてはいないが、何曲か耳にした限りではなんともヌルい感じの出来だっただけにさらに意外性は増す。▼おそらくバンド側としても『Rewind the Film』は余興的な作品で、初めからこの『Futurology』が本命であったのだろう。▼いつになく打ち込み系の音が多く、80年代ニューウェーブ(「Let’s Go to War」「Between the Clock and the Bed」)やクラウト・ロック(「Europa Geht Durch Mich」)の影響を感じさせるのだが、マニックスの場合、影響された音楽がそのままアウトプットされるのではなく、どことなく歪な形で表現されるところが面白い。▼良く言えば芯が通っている、悪く言えば不器用ということになるのだが、結果的にそれがどのシーンにも属さない独自のポジションを築くことに繋がっているのだと思う。▼先行シングル「Walk Me to the Bridge」のサビに出てくるシンセ、いまどきこんなにダサい音色を堂々と鳴らすことのできるバンドがいるだろうか?と唖然、しかし何度も聴くとこれがクセになってくる。▼グリーグの「山の魔王の宮殿にて」を引用した「Let's Go to War」や、英語とドイツ語で半々歌われる「Europa Geht Durch Mich」、ギターを弾きまくるインスト2曲など、いずれも紙一重なのだが、曲の良さで強引に納得させられてしまう。▼サッカーの応援歌集みたいな『Everything Must Go』が好きになれないぼくとしては、これは『The Holy Bible』以来の傑作だと言い切ってしまいたい。

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by ok-computer | 2014-08-10 09:46 | 音楽 | Trackback | Comments(0)