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音楽の海岸

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エルトン・ジョン『Goodbye Yellow Brick Road』

ぼくが音楽を聴き始めた1980年代のエルトン・ジョンはすでにピークは過ぎていたし、派手なステージ衣装とプライヴェートな出来事でゴシップ欄を賑わせる「THE 芸能人」という感じで、まったく興味を憶えるということがなかったのだが、最近になって彼に関する短いドキュメンタリーを見て以来、このアルバムのタイトル曲が頭から離れなくなってしまい、遂にアルバムを購入するに至った。結果、アーティストを本業以外の部分で判断してはいけない、そして、音楽は虚心坦懐に聴かなくてはいけない、ということを改めて思い知らされることになった。

発表当時はアナログ2枚組に収められた全17曲には、いわゆる捨て曲が一切無いばかりか、シングルカットされた4曲以外にもなぜこの曲がシングルにならなかったのか?と思わせられるような曲が目白押しのすごいアルバムで、もしこの作品が80年代に発表されていたなら、アルバムの半分くらいはシングルカットされていたのではないだろうか。

実のところ、なぜシングルカットが4曲だけ(というのも何だが)だったのかははっきりしていて、当時のエルトン・ジョンのアルバムリリースのペースが早過ぎて、そんなにシングルカットしている暇がなかったから。『Goodbye Yellow Brick Road』がリリースされたのは1973年の10月で、前作『Don't Shoot Me I'm Only the Piano Player』が1973年1月、次作『Caribou』が1974年6月と、8〜9ヶ月に1枚というハイペースで作品を発表し続けている。しかもそれぞれのアルバムのなかに「Crocodile Rock」、「Goodbye Yellow Brick Road」(あるいは「Candle in the Wind」)、「Don't Let the Sun Go Down on Me」という後世まで残る(売れ続ける)ヒットソングが含まれているのだから、レコード会社にとっても異論はなかったのだろう。

ちょっと想像してみるのだが、ビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』やデビッド・ボウイの『Low』を手渡されたレコード会社の担当者は素晴らしい作品だとは感じたかもしれない(あるいは感じもしなかったかもしれない)が、どうプロモーションしたらいいのか、きっと頭を抱えたに違いない(サーフィーンも海も車も一切出てこないアルバムと、作品の半分はインスト曲で占められたアルバム)。一方、エルトンのプロモーション担当者はそんなことには無縁で、アルバムを聴いてこう言ったのではないだろうか。「エルトンさん、新作最高です!こいつは大ヒットしますよ!」(←すべて想像です)

この、作品の良さがそのままヒットに繋がるような、どメジャーな音楽性は、ボウイのように格好良いわけでもないエルトンを世界のスーパースターへ導くことになったが、ロック史上のベストアルバム的な企画で、『Goodbye Yellow Brick Road』が『Pet Sounds』や『Low』よりも高く評価されることが決してない要因であるのかもしれない。

とは言え、このアルバムが素晴らしいことには何ら変わりがない。1980年代以降のエルトンのシングル群に較べれば、この作品に収められた「Sweet Painted Lady」「All the Girls Love Alice」「Grey Seal」「I've Seen That Movie Too」「Harmony」といった当時はシングルにならなかった楽曲(「Harmony」は後になってシングルカットされた)のほうがはるかに優れているのは明らかだろう。さらに言ってしまえば、エルトンの全キャリアを振り返るベスト盤を買って、半分は悲惨な曲を聴かされる羽目になるよりは、『Goodbye Yellow Brick Road』を聴いたほうがいい。エルトン風レゲエ(「Jamaica Jerk-Off」)、エルトン風カントリー(「Roy Rogers」「Social Disease」)、「Crocodile Rock」に続く戯画的ロックンロール(「Your Sister Can't Twist (But She Can Rock 'n Roll)」)もバッチリ決まった、言葉本来の意味における「ベスト」なアルバムだといえる。

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by ok-computer | 2016-05-31 14:00 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

レディオヘッド『A Moon Shaped Pool』レヴュー

ロッキング・オン的な大仰な物言いに信用が置けないことはもはや分かりきっているが、それにしても先行シングルの「Burn The Witch」は期待外れな曲だった。だって、レディオヘッドの5年ぶりのアルバムからのファーストカットがこれだよ!?みんなこのくらいの楽曲で満足するくらいレディオヘッドに対する期待値は下がっていたの!?という感想から1週間もたたないうちに彼らのニュー・アルバムが届けられることになった。

改めてアルバム中の1曲として聴いてみてもその印象は変わらないが、ありがたいことにこれはちょっと辛目のアペリティフにしか過ぎなかった。20年以上前の曲(「True Love Waits」)を初めとして、以前から彼らのライブ等で演奏されてきた曲が中心となっているために、寄せ集めの作品という誹りを受けかねないようにも思えるが、この美しいアルバムを聴いているとそんなことはどうでもよくなってしまう。むしろ、彼らの楽曲が持つ時代を超えた普遍性とそのアレンジ能力の高さに刮目することになるだろう。

近年のレディオヘッドはメンバーのソロ活動が活発になっており、トム・ヨークの気ままな課外活動を見ているとレディオヘッドに対してそれほどの存在意義を見出していないのではないかという危惧をファンに抱かせてもいたが、こうして新作を聴く限り、トムのバンド外における電子音響の実験と、ジョニー・グリーンウッドがサントラ仕事で培ったストリングス・アレンジの技術とがちゃんとレディオヘッド本体に還元されているばかりか、ソロ活動以上の高次元でそれらを作品として結実させていることが分かる。

オススメ曲は全部!(あ、「Burn The Witch」も一応)以上!黙って聴け!と言いたくなってしまうが、少しだけ書いておくと、「Ful Stop」「Glass Eyes」「Identikit」「The Numbers」と続く中盤の流れが際立っていて、バンドサウンドとオーケストラとが一体となって、しかし決して熱くはならないうねりみたいなものが感じられて素晴らしい。

レディオヘッドが曲(ボーカルの旋律)だけではなく、音そのものというか、音響のすべてを聴かせようとしているのは明らかで、考えてみれば、『Kid A』時の「ロックなんてゴミだ」というトムの発言や、それ以降のギター・サウンドとの別離などもその文脈で考えると納得できるような気がするのだが、今作においてはそういった頭でっかちな部分やコンセプトとかは超越して、複雑なことをしているに違いないのにとても自然体なものとして音楽(サウンド)が響いてくる。寄せ集め的な楽曲や(一見)スムーズなサウンドにレディオヘッドもいよいよ追憶をはじめたのかと思われるかもしれないが、この複雑なことを複雑とは感じさせない、能ある鷹は爪を隠す的なサウンドがレディオヘッドの新境地であると思う。

レディオヘッドの新作発表がどうして毎回これほど話題になるのか、あるいは部外者には分かりにくいかもしれない。それは、たとえばビートルズやデビッド・ボウイやセックス・ピストルズとは違って、このバンドには文化的な背景と一緒に語られることが(ほとんど)ないからかもしれない。しかしその理由は彼らのレコードを聴けばすぐに分かることだ。実際、彼らほど音楽にすべてを語らせているバンドも珍しいのではないだろうか。いや、むしろ音楽以外のことを語る(見せる)必要が生じていることに近代音楽産業における問題点があるのかもしれないのだが、そこには無縁であること、また無縁でいられることにレディオヘッドの特殊な立ち位置を確認することができる。
 
さあ、もうそろそろペンは置いて、レディオヘッドの新作に(前作とは違って)11曲も収録されていたことに感謝しよう。そして、紛うことなき傑作であることにも。

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by ok-computer | 2016-05-09 22:41 | Trackback | Comments(0)

藤崎了一 『Vector of Energy』(the three konohana)

一見バラバラな作品たちは、タイトル通り力学というコンセプトによって繋がれた、どれも素晴らしいものでした。特に油にインクを落とした際の動きをハイスピードカメラによって捉えた映像作品は、いつまでも見ていたいと思わせるものでした(実際、長時間眺めていました)。

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by ok-computer | 2016-05-08 11:08 | アート | Trackback | Comments(0)

第14回 四天王寺 春の大古本祭り

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by ok-computer | 2016-05-04 17:48 | 写真 | Trackback | Comments(0)