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音楽の海岸

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平野啓一郎『マチネの終わりに』

平野啓一郎の『マチネの終わりに』を読了。今年最後に読んだ小説は今年最高の読書体験となった。

平野啓一郎氏については、デビュー作『日蝕』が芥川賞を受賞した際のメディア報道の印象から、三島由紀夫かぶれの晦渋な文章を書くスカした作家だと勝手に思い込んでしまい、今の今までその小説を読むことがなかった自分を酷く恥じ入っている。なんて素晴らしい作品! なんて素晴らしいエンディング!(時々、読めないような難しい漢字は出てきますが)

実はこの作品を読む少し前に『TALKIN’ジャズ×文学』という、ジャズ評論家の小川隆夫氏との対談本は読んでいて、そこでの対談相手以上の音楽に対する博識と、その理知的・論理的な語り口に驚嘆させられたこともあって、『マチネの終わりに』を手にしたという部分もあったのだが、恋愛小説であるのと同時に、音楽(家)小説でもあるこの作品における、音楽についての描写の緻密さ・臨場感(リアリティ)・言葉の選択の素晴らしさ・美しさに関しては、ちょっと他には比類がないくらいで、楽器も弾けない・譜面も読めないぼくがそう感じるくらいだから、楽器(特にギター)が弾ける人・音楽理論に詳しい人なら、この小説をさらに楽しめるに違いない(もちろん、そうでなくても最高に楽しめる)。

400ページ余りという、決して短くはない小説だが、音楽・文学・映画・アートなどに関する膨大な知識と、ユーゴスラビア紛争・イラク戦争・欧州難民危機・テロリズム・リーマンショック・東日本大震災などの世界が直面する諸問題を縦糸やら横糸に絡めながら多層的に展開する物語を思えば、よくこれだけのマテリアルをこれだけの分量に収めたものだと感心してしまう。そして何より凄いのは、それらのトピックがただ単に小説の時代背景として配置されているのではなく、二人の関係性を左右する大きな要因として、ストーリーと密着した形で機能し、描かれてゆく点にあるのだと思う。

読者にはすべての情報が与えられ、いわば神の視点から登場人物たちを眺めるような構造になっていて、彼らの悲劇的なすれ違いがどんな運命を辿るのか?ということが一番の興味となって読み進めていくことになるので、必然エンディングは重要になるのだが、(もちろん詳しくは書かないが)これ以上だと白けてしまうし、これ以下だとあまりに切なすぎるという、ギリギリのところで、平野啓一郎はこれしかない!という最高の和音を奏でてみせる。それは読む者の心のなかでいつまでもいつまでも止むことなく響く。

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第2回プラチナブロガーコンテスト



by ok-computer | 2017-12-30 08:55 | 文学・本 | Trackback | Comments(0)

フェニックス『Ti Amo』

フランスのロック・バンド、フェニックス(Phoenix)のアルバム『Ti Amo』は今年の意外な収穫。以前からその存在を認識してはいたものの、こんなに良いバンドだったとは思ってなかった。ストロークスの曲をダフト・パンクがカバーしたような趣きと、パルプに通じるような「知的な軽薄さ」が同居した音世界。アルバムタイトルはイタリア語、アレンジはイタロディスコ調、PVやアー写にもイタリアン・テイストがふんだんに取り入れられるという、謎のイタリア趣味が作品を貫かれていて、一聴するととても軽い音楽に思えるが、何度も聴くうちにそこから切なさや哀しみのようなものが浮かび上がってくる。フランスのテロ事件や極右政党の台頭を背景に、愛を歌うことで自分たちなりの抵抗を試みたということはインタビューで彼らも認めているところ。個人的ベスト・トラックはラストの「Telefono」だが、PVは作られていないようなので、タイトル曲の、PVとは別にグーグルのアート・プロジェクト「グーグル・アート&カルチャー」の一環として撮影されたヴァージョン(曲もアルバムとは微妙に違うヴァージョン)を下に貼り付けておく。35mmフィルムによる一発撮り!





by ok-computer | 2017-12-28 21:40 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

刺繍する犬 個展『無効化された音の装置』(YOD Gallery)

鉛で封じ込められたターンテーブルやMacPCは、まさに今回の展覧会のタイトルを象徴する作品でしたが、鉛で内部を封じ込めたはずが、逆にそれが内面を顕在化するような逆説的な魅力がありました。そして、遮断することによって見る者に意識をさせるその内面とは、素材となっている機械類のそれに止まらず、刺繍する犬さん自身の内なる声でもあるのだと思いました。

アーティストに「なぜ?」と質問するのは悪いと思いながらも、PCの基板や音響機器と刺繍がどうやって結びついたのか?とは聞かずにはいられませんでした。刺繍する犬さん(妙齢の美人さん)によると、実家が工場なので機械パーツ類への興味(偏愛?)は昔からあったのと(「基板って格好いいと思いませんか?」)、MacやiPodなど、目の前にあって自分が世界と交信するツールを題材とするのはすごく自然なことだった、とのことでした。また、刺繍だと絵画のように2次元ではなく、かといって完全な3次元というわけでもないユニークな表現ができるということも仰っていて、それを聞いてすごく得心がいったというか、他のアーティストと一線を画す秘密の一旦をうかがえたような気がしました。

とにかく、刺繍にまつわるバイアスを根底から覆してくれるダーク&ソリッド&メタリックな表現世界。もしかしたら一部ではすでに高名な方なのかもしれませんが、ぼくは初めてその作品を拝見して衝撃を受けました。西天満のYOD Galleryで1月27日まで。必見の展覧会ではないかと思います。

ところで、「刺繍の犬」さんというアーティスト名は一度聞いたら忘れられない秀逸なネーミングだと思いますが、ご本人とお話していて、もちろんご本名は存じ上げないので、「刺繍の犬さんは・・・」と何度も発語していると、だんだん恥ずかしくなって困ってしまいました(でも「刺繍」さんとか「犬」さんとか省略することもできないし、笑)。

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by ok-computer | 2017-12-24 00:23 | アート | Trackback | Comments(0)

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を観ました。

第一作(エピソード4)を8才のときに封切映画館で観たことは、子ども時代の一番強烈な映像体験だったこともあって、何度も観返したりするようなマニアではないものの、『スター・ウォーズ』にはそれなりの思い入れがあります。

さて今回の映画ですが、最初の一時間半ほどは、ぼくが苦手な『スター・ウォーズ』の側面(クリーチャーが一杯出てきて、テーマパークに迷い込んだような趣き)が強くて、どうなることかと不安でしたが、後半は挽回して一気に盛り返したように思います。

『ゴッドファーザー』シリーズでよく使われるような、複数のストーリーが同じリズム感でクライマックスに向かっていくところには盛り上がらずにはいられませんし、塩の惑星クレイトの戦闘シーンにおける、戦闘機が通過すると白い地面にドローイングのように赤い軌跡が描かれていくのは非常に美しい眺めでした。

他にも、ルークとの対決シーンでのカイロ・レンのライトセーバーが燃え盛る十字だったこと(キリストとユダ?)や、(前作で不評だった)ファースト・オーダーのナチス的なイメージの使用が今回の作品からは一掃されたとか、フィンがモテモテなこととか、色々あるのですが、これから観る方もいらっしゃるでしょうから、この辺りで。

というわけで、(おこがましくも)採点すれば、前半6点、後半は10点満点、という感じでしょうか。何より『フォースの覚醒』のときの○○・○○とは違って、ルーク・スカイウォーカー、およびマーク・ハミルに対する敬意が感じられたのがよかった。

ただ、『スター・ウォーズ』シリーズの未来への明るい希望(萌芽)を感じさせる一方で、失ったものの大きさを感じずにいられないのも今回のシリーズの特徴ではありますねー。

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by ok-computer | 2017-12-19 16:03 | 映画 | Trackback | Comments(0)

北加賀屋にて

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by ok-computer | 2017-12-02 19:43 | 写真 | Trackback | Comments(0)