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音楽の海岸

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ビル・エヴァンス『Another Time: The Hilversum Concert』

1968年のライブとはいえ、放送用にラジオのスタジオで録音された音源は非常に鮮明で(もしかしたら有名な『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』よりも鮮度は高いのではないか)、選曲も素晴らしく、演奏自体も「Nardis」や「Very Early」など、『Explorations』と『Moon Beams』に収められた、それぞれのスタジオ・ヴァージョンよりもテンポが早くてノリも良く、こちらの方が好みかも?と思わせられた。

観客の反応は放送を意識しているのか、割と冷静な感じだけど、考えてみればあの『Waltz for Debby』だって、目の前で歴史的な演奏が繰り広げられているのにお前らはちゃんと聴いているのか!?という感じだったので、当時はそんなものだったのかも。

いずれにしろ、まだこんな音源が残っていたことに感謝するしかない、ジャズ・フリークのみならず、音楽ファン必聴の一枚。

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by ok-computer | 2018-01-29 22:57 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

R.I.P. マーク・E・スミス

ザ・フォールのマーク・E・スミスが亡くなったと聞いて、すごいショックを受けている。
ザ・フォールが出した31枚のオリジナル・アルバムのうち15枚を持っている。

一つのリフをひたすら反復する上に、ラップというよりアジテーションに近い彼のボーカルが乗る音楽スタイルは、
誰にでも真似できそうで誰にもできなかった唯一無二の個性だった。

ポスト・パンクに始まり、マンチェスター・ムーヴメント、ブリット・ポップなどを横目に見ながら、
40年を超えるキャリアを生き抜いてきたこのバンドには、
『Hex Enduction Hour』『The Wonderful and Frightening World Of...』『This Nation's Saving Grace』
『Bend Sinister』(このブログの由来となったアルバム)『Extricate』などなど、多数の傑作アルバムが存在する。

最近では、2010年に『Your Future Our Clutter』という
最盛期の作品群に勝るとも劣らない作品を出してファンを喜ばせてくれた。

世界最古の現役マンチェスター・バンドがこれで終焉してしまうのは本当に寂しい。
さようなら、そして、ありがとう。




by ok-computer | 2018-01-25 19:25 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

『はじまりのうた BEGIN AGAIN』、『スポットライト 世紀のスクープ』など

年末年始にかけて、久しぶりに色々映画を観たのでその感想を。

『はじまりのうた BEGIN AGAIN』
ジョン・カーニー監督が、『ONCE ダブリンの街角で』の舞台をニューヨークに移してリミックスした如き作品だが、前作に劣らず素晴らしい。ニューヨークの街角におけるフィールド・レコーディングによるアルバム作りの一連のシークエンスが作品の白眉。映画の中で音楽が鳴らされれば鳴らされるほど人間関係が改善されていくのが面白い(笑)『ONCE ダブリンの街角で』と同じく、引っ付きそうで引っ付かない男女関係の描き方はカーニー監督の名人芸!

『スポットライト 世紀のスクープ』
サラッと一定の距離を置いて描くことによって、衝撃的な内容を際立たせる手法が素晴らしい。減点法だとほとんどマイナス点の見当たらない作品。巨悪にも怯むことのなくぶつかっていくジャーナリスト。部下からの突き上げや、読者や団体からの反発が予想されても真正面から受け止める上司、どこかの美しくてすごい国とは大違いだ・・・・・(笑)

『キャロル』
トッド・ヘインズ監督が『エデンより彼方に』でも試みた、往年のハリウッド・スタイルのデコレーションのなかに、その当時では考えられなかった(表に出ることの無かった)性的マイノリティの命題を挿入して、人生の価値観を問う。退屈寸前なまでに勿体ぶった描き方だが、そのたっぷりとした行間のなかで自身を重ね合わせたり、そこに様々な意味合いを垣間見ることができれば楽しめる。ラストシーンの台詞のない表情だけの演技と、その後に余韻を引き摺らずスパッと暗転するのが素晴らしい。

『ミッドナイトクロス』
邦題は意味不明。原題は『Blow Out』で、タイトル・内容ともに、アントニオーニの『欲望(Blowup)』のへのオマージュになっている。映画はB級というより、C級と言ったほうが良さそうな劇中劇から始まって眩暈がしそうになるが、その劇中劇が作品のなかで何度か繰り返される度に意味合いが変わって、ラストでは切なくも、映画史に残るような偏執狂的な名シーンへと変奏されていく。分割画面、パンフォーカス、室内での俯瞰ショット、360度回転カメラ、クレーン撮影による長廻し、クライマックスでの大スローモーションなどなど、映像テクニックの博覧強記ともいえるようなブライアン・デ・パルマのカメラワークがたっぷりと楽しめる。(個人的には)『愛のメモリー』『フューリー』と並ぶ、デ・パルマの三大傑作のひとつであり、ジョン・トラボルタ一世一代の名演技を観ることもできる(笑)

他には、インド映画の『きっと、うまくいく』も良かった。途中あまりに涙が出てしまって、何度もビデオを止めなくてはいけなかったよ(笑)

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by ok-computer | 2018-01-21 15:16 | 映画 | Trackback | Comments(0)

『インターステラー』

『インターステラー』を観ました。
ずっと前からハードディスクに録画してはいたものの、3時間弱という上映時間にビビって、なかなか踏ん切りがつかなかったのですが、知り合いの方からの勧めもあって、ようやく観ることができました。

まず開巻早々現れるのは、周りをトウモロコシ畑に囲まれた、まるで『フィールド・オブ・ドリームス』みたいな1960年代風アメリカの風景で、SF映画と聞いていたのになんで?となるわけですが、それが異常気象と食糧難で滅亡の危機に瀕している近未来の地球の姿だということがだんだんと分かってきます(それを更なる未来から回想する形式になっていることも)。食糧難で二次・三次産業よりも一次産業が重要視されるようになると、ライフスタイルまでもが過去の様式へと回帰するという描写がなかなか面白いです。

中盤以降は、人類を救うために宇宙空間で奮闘する主人公たちの活躍が描かれてゆくので、比較的安心して(?)SF的世界観に浸ることができますが、「『2001年宇宙の旅』を意識した」という監督のクリストファー・ノーランの話からも分かるように、物語は複雑な様相を帯びてきて、『2001年』を超えてみせよう!という意気込みが画面からも伝わってくる一方で、「相対性理論と量子論を統合した重力理論を完成させる」などという話になってくると、ぼくにはチンプンカンプンで、さらには「事象の地平線」「特異点」「ワームホール」「五次元」といったキーワードが散りばめられたディテールに関してはまったく理解することができませんでした。
しかし、理解できないながらも退屈することもなく最後まで目が離せないのはやはりクリストファー・ノーランの力量によるもので、その映像は理屈を超えて観る者に迫ってくるものがあります。というか、むしろ理屈を分かっている人の方が後半の展開がご都合主義的に見えてくるかもしれないのですが、その辺りに到ってはもう人知を超えた領域にまで踏み込んでしまっているので、何が正解かはもちろん誰にも分からず、そこを虚構の力を借りて、張り巡らされた伏線を回収しつつ、物語を(そして人類を!)救ってみせるところにこの映画の最も感動的な部分があるのではないかと感じました。
クリストファー・ノーランはデビュー作の『フォロウィング』と『プレステージ』が好きで、『メメント』と『ダークナイト』は苦手、という相性が良いのか悪いのか測りかねる監督さんですが、これは気に入りました。

ところで、ストーリーとは関係なく、「うわっ、マット・デイモン!」とビックリして(あるいは、笑って)しまうあのシーンは狙ってやっているのでしょうか!?

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by ok-computer | 2018-01-06 18:45 | 映画 | Trackback | Comments(0)