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音楽の海岸

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「それぞれのリアル」(大洲 大作、川崎 誠二、小林 哲朗、品川 美香、三枝 愛 @あまらぶアートラボ/兵庫県尼崎市)

 同じときに同じものを見て同じように感じることが人間関係においては重要であったりしますが、アートの世界の場合、同じものを見ても違うように感じるという、ある意味本来的なことを作品を通して敷衍することはひとつの命題であるように思われます。

 処理しきれないくらいの情報過多社会の中にあっては、たとえ対象物を目の前にしていても、一切のフィルターもバイアスもなくそれらに向き合うことさえも困難なことなのかもしれません。現代の不確かなリアリティといかに向き合い、表現していくのか?また、われわれはそれをどのように受け止めるべきなのか?「それぞれのリアル」とはまさに言い得て妙なタイトルではないでしょうか。

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 一番のお目当てだった品川美香さんは3作品を出展。代表作である「How to Be Good」は、パソコンの小さな画面で見たときには可愛さが際立っていましたが、実際は巨大な(2550×3420)作品で、その大きさを前にすると、品川さんが意図する「可愛さ・怖さ、既知性と未知性などの両義性と二重性」がリアルに伝わってきました。

 子どもをモチーフとするのは、母親が保育士で、自身も中学生くらいまでは保育士になるものだと思っていたこともあって、子どもは大切な存在であること、背景の花は、父親が蘭の栽培などをしていて、家が常に花で一杯であったこと、同じく背景に描かれているミツバチは、アインシュタインの「ミツバチがこの世からいなくなったら、人類は4年以上生きられないだろう」という発言と、近年ミツバチが原因不明に大量に失踪する「蜂群崩壊症候群」という現象が様々な国で報告されていることを受けてのものだと言うことです(会場で流されていたビデオの中の本人談より)。

 作品に描かれている女の子が見つめているものは何なのだろう?と眺めながらずっと考えていたのですが、やがて、はっと気付きました。彼女の瞳に写っているのは、鑑賞者であるわれわれの姿なのだと。

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 大洲大作さんの「Flood Plain」。阪神・阪急・京阪電車などの車窓を撮影した写真を、フィルムを貼った電車の戸袋窓にプロジェクターで投影しています。動画のほうが分かりやすいと思うのですが、緩やかにモンタージュされた写真のイメージはとても美しく、下衆な感想ですが、鉄道博物館に出展されても喜ばれるのではないかと思いました。

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 車窓を流れる雨粒を透かして漏れてくる光のイメージが実に幻想的。

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 今日はワークショップがあったみたいで(満員で参加できなかったYO!)、川崎誠二さんが在廊されていました。女性にモテモテ(笑)

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 ピーマン、そら豆、枝豆、茗荷、唐辛子。全部木で出来ています。今回の展覧会のテーマの最も分かりやすい体現者だったかもしれません。

 下の動画に登場するのは順に、①小林哲朗さん「メカワールドへ」「電子の回路」②品川美香さん「How to Be Good」「見えるものと見えないもの」「Spring」③大洲大作さん「光のシークエンス -Trans/Lines」「Flood Plain」「警報灯」④川崎誠二さん「神戸風月堂のゴーフル」「アスパラガス」ほか⑤三枝愛さん「庭のほつれ」、です。



by ok-computer | 2018-08-26 22:16 | アート | Trackback | Comments(0)

最近観た映画(「バードマン」「アメリカン・ハッスル」など)

最近観た映画の感想を。

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
サブリミナル的に挿入される冒頭の2カットとエピローグ部分を除いて、映画全体が途切れることのない(疑似)ワンカットの長廻しになっているという構成に加えて、再起を賭けた舞台のオープニング・ナイトを控えた俳優の不安や焦燥が次々と視覚化されていくというスーパーリアリズムの手法も全編で用いられた、いかにもアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督(『アモーレス・ペロス』『バベル』)らしい外連味たっぷりな演出。ストーリーそのものではなく、それを伝達するのに使われる、奔放で刺激的なイメージ(と音)の連なりによって観る者を揺さぶってくる。結果、特別な映像体験として心に残る。

『アンチクライスト』
ラース・フォン・トリアーの作品だから、ということである程度覚悟はしていましたが、なかなかに不快な映画でした。『メランコリア』や『ドッグヴィル』など、トリアー監督の映画には好きなものもありますが、作品の出来が良くないと(肌に合わないと)観る者に嫌がらせするためだけに作ったのではないか?と思わせてしまうところがあります。スーパースローモーションを用いた非常に美しい場面もあり、観る価値など全くない!とは断言できないところもこの監督の悩ましいところであるのですが…

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
こんな描写が物語的に必要なのだろうか?というシーンが続くが、そんな一見不要にも思えるシークエンスの連続が主人公の不安定さを徐々に炙り出してゆく。エンディングまで観た後に最初のシーンに戻ってみると、饒舌な主人公がそこには居て、何とも言えないような気分になる。ミシェル・ウィリアムズが両作品に出ていることもあるけれど、マーティン・スコセッシの『シャッターアイランド』(好きな作品)とテーマ的に似通ったものを感じた。

『アメリカン・ハッスル』
『世界にひとつだけのプレイブック』(←意味不明の邦題)は個人的にはイマイチでしたが、この作品はデヴィッド・O・ラッセル監督が本来の才気溢れるスタイルに回帰したようで最高でした。開巻早々、衝撃的なハゲデブ姿を披露するクリスチャン・ベールに度肝を抜かれるうえに、そんな彼がエイミー・アダムスとジェニファー・ローレンスという滅茶苦茶セクシーなふたりから愛されるという設定には有り得ない!と感じてしまうわけですが、映画が進むにつれて、その主人公(心臓疾患持ちで分裂症気味の詐欺師)に頑張れ!権威に負けるな!ジェニファー・ローレンスとは別れろ!(ちょっと勿体無いけど)と感情移入してゆき、妙にハイテンションな登場人物たちに翻弄されているうちに、あれよあれよとすべてが落ち着くところに落ち着いてしまうという見事な作品。クリスチャン・ベールとエイミー・アダムスとを結びつけるキューピッドがデューク・エリントンだというのもクールな、今回のベストワン!

その他、『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』と『地球は女で回っている』も観ました。『地球は女で回っている』(これも意味不明な邦題)は再見でしたが、最初観たときに少し違和感を憶えた部分(ウディ・アレンが汚い四文字言葉を話したり、全編においてゴダールみたいなジャンプ・カットが用いられている)が馴れのせいもあって薄まって、ニュートラルに観ることができました。これは最上のウディ・アレンではないかもしれませんが、すぐれて典型的なウディ・アレン映画。やはり好きです。

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by ok-computer | 2018-08-18 23:03 | 映画 | Trackback | Comments(0)

ジョン・コルトレーン『Both Directions at Once: The Lost Album』

ジョン・コルトレーンの完全未発表スタジオ録音作『Both Directions at Once: The Lost Album』を聴く。

『A Love Supreme』『Crescent』『Live at Birdland』といった、コルトレーンの傑作群を差し置いても聴くべきアルバムだとまでは言えないけれど、コルトレーンを聴いたことが無い人が、ただ単に話題になっているからと言って買ったとしてもコルトレーンの魅力は充分に伝わってくる素晴らしい内容だと思う。

録音は1963年3月6日で、コルトレーンの空間を埋め尽くすような、所謂「シーツ・オブ・サウンド」のスタイルはすでに確立されている一方で、後年の一部の人には近寄り難いと思わせるようなフリージャズ寄りの世界にはまだ至らない、一般的なジャズ・ファンにとって最もイメージしやすく、またアクセスもしやすいであろう時期の極め付きのコルトレーン・サウンドを堪能することができる。

「Untitled Original 11383」と「Untitled Original 11386」という、完全未発表のオリジナル作品は、その後再度取り上げられることが無かったことが不思議なくらいどちらもクオリティの高い楽曲(と演奏)であり、さらに「Impressions」と「One Up, One Down」のスタジオ録音版がここで聴けることもコルトレーン・ファンにとっては堪らない魅力だろう。とくに後者は、スタジオテイクならではの破綻の無さと、ライブ録音にも負けないような熱気とが両立された最高の演奏ではないだろうか。

アルバム・ジャケットの内側に印刷された「これは、まるで巨大ピラミッドの中に新たな隠し部屋を発見したようなものだ」というソニー・ロリンズのコメントには納得するしかない、ジョン・コルトレーンという巨大な才能を持ったミュージシャンの伝説をより強固なものにし、新たな一ページを加えることとなる、コルトレーンやジャズ好きを自認する者にとっては必聴の一枚。



by ok-computer | 2018-08-07 22:18 | 音楽 | Trackback | Comments(0)