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音楽の海岸

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最近読んだ本(『ニムロッド』『82年生まれ、キム・ジヨン』ほか)

上田岳弘『ニムロッド』

とりあえずamazonに掲載されているレビューは信用しなくていい。何も無い所から価値を生み出すという点において、小説と仮想通貨を結びつける慧眼、そして、様々なマテリアルとトピックをモザイク状に配置して一幅の作品を編み上げるその手腕に驚嘆した。短いが確かな読み応えがある。

朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』

巧みにコーティングされてはいるものの、政治的とも言ってもいいくらいにメッセージ色が濃い。あの朝井リョウでさえ(失礼)も書かずにはいられないほど、昨今の日本社会に対する危機感は強いということか。「何もないところに無理やり対立を生んで、やっと、存在を感じられる」というのは平成という時代を優れて言い表している。作者が現代日本文学の最前線に躍り出たことを示す力作。

イアン・マキューアン『アムステルダム』

死んだ1人の女性を巡る、4人の男たちの渦巻く虚栄心と、巧みな伏線が張り巡らされたプロット。最後に笑うのは誰か?「ひとつ条件がある。君も同じようにしてくれること」。予想はできなかったけれど、振り返ると納得するしかない結末に唸らされた。音楽ファンにとっては、「グレツキをインテリ向けにしたような作曲家」と形容される作曲家クライヴ・リンリーのモデルについて推察するのも一興(ジョン・タヴナーかな?)。

チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』

告発の書であり、問題提議の小説ではあるが、その筆致はどことなくユーモラスであり、小説的な感興にも不足していない。だが、描かれる内容は重く、ここにある男女格差や社会システムの歪みは日本でもそのまま当て嵌まることに何より愕然とさせられる。読後にはモヤモヤしたものが残るが、安易な結末にしなかったのは正解。いろんな意味で今必読の一冊だと言えるだろう。

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by ok-computer | 2019-05-05 16:43 | 文学・本 | Trackback | Comments(0)